第十九話


俺は、マクラウドに八騎将との決闘を任せ、ジョアンとの決闘の為、銀月の塔へ向かった。

ビリー「よく逃げずにやって来たな東洋人ッ、グヘヘ…!」

ゲイル「貴様ら、一対一の決闘じゃなかったのか?」

ジャック「ぐへへへへ…勘違いするなよ。お前さんが加勢を頼んでないか確認するだけだ」

ビリー「どうやら、あんた一人のようだな。オッケーだ、通っていいぜ」

 

そして俺は展望台へ上った。目の前にはジョアンの姿がある。

ジョアン「来たか……」

ゲイル「ジョアン=エリータス………」

ジョアン「まずは今宵の決闘における立会人を紹介しよう……」

ソフィア「……………」

ゲイル「ソフィア………」

ジョアン「東洋人…覚悟はいいか……?」

ソフィア「ジョアン、やめて!…こんな事してもしょうがないでしょう?」

ジョアン「しょうがない…?そんな事があるものか!ソフィア!

     君は東洋人が好きなんだ!このボクを見ていないっ!

     ボクのどこが劣るんだ?こんな傭兵風情の東洋人に、エリータスに生まれたこのボクが!」

ソフィア「……………」

ジョアン「きっ、君も思っているんだ!ボ、ボ、ボクがママの…」

ゲイル「!?」

ジョアン「マリエル=エリータスの…あ、操り人形だって…。ただの木偶人形だって!」

ソフィア「ジョアン!?」

ジョアン「うう…うぅぅーーーーーっっっ!」

突然、ジョアンは豹変した。

ジョアン「ボ、ボクはマリエルの人形…。ち、ち、違う…最高の聖騎士…ラージン=エリータスの息子だ。

     うぅ…うううぅぅぅーーーっ!!」

ジョアンは絶叫しながら抜刀した。

ゲイル「くっ!」

ジョアンの剣を聖剣で受け止めた俺。その時、何かが聞こえた。

ゲイル「これは…ジョアン!?」

ジョアン「ボクは、ボクは………!」

ゲイル「そうか…お前は悲しいんだな。…その悲しみ、俺が何とかしてやる!」

俺は聖剣を光らせ、

ゲイル「聖剣よ、その光、割れに力を貸したまえ。我に聖なる力を見せたまえ。

    そして、ジョアン=エリータスの悲しみを消し去りたまえっ!」

エクスカリバーを光らせながら、平たい部分でジョアンを攻撃する。

ジョアン「ま、負けた…。…パパの子であるボクが…。聖騎士の血を受け継ぐボクが………」

ゲイル「(これで…悲しみは消えたのか?)」

ジョアン「…ボクはダメなのか?みんなが影でささやくように、ママの操り人形なのか……」

ゲイル「ジョアン………」

ジョアン「もうイヤだーーーーーっ!!殺せぇぇ!ボクなんか殺せ!」

その時、ソフィアがジョアンをかばう。

ジョアン「!」

ソフィア「ゲイルさん、勝負はつきました…。貴方の…勝ちです…。

     だから…もう剣を収めて下さい…。すべて終わりにしましょう」

ゲイル「ああ。わかっているよ」

俺は剣を収めた。

ソフィア「ジョアン…私…貴方のもとへ行きます…。もう…誰も苦しめません…。父も…貴方も…」

ジョアン「ソ、ソフィアぁ…」

ソフィア「ゲイルさん…。今日まで本当に楽しかったです。貴方に会えて本当に良かった……」

ゲイル「ソフィア……」

ソフィア「私…いつからか…私…貴方の事が…。でも…でも……」

ゲイル「ソフィア、俺は………」

ソフィア「ごめんなさいっ!」

ソフィアは目に涙を浮かべたまま、逃げるように走り去った。

ジョアン「…東洋人、ボクは…貴様に勝ったのか?」

ゲイル「…ああ。お前の勝ちだ、ジョアン。幸せにな」

ジョアン「…ソフィア……泣いてた」

ジョアンは、おほつかない足どりでゆっくりと展望台の階段を降りていった。

ゲイル「…ソフィア、ジョアンと幸せにな」

その時、俺の目から涙が零れ落ちた。

ゲイル「何故だ?涙が出てくる……。悲しいのか………?」

そう思いながら俺は宿舎へ戻った。涙を流しながら………。

 

次の日の朝、最初の頃に会っていた出入国管理局の女性が、

昨晩開かれた会議によって、ドルファンとの契約が切れる事を知らせに来た。

ピコは叙勲式で勲章だけでも貰っておこうと言う。

また、マクラウドに八騎将との決闘の事を聞いたが、

マクラウドは勝利を収めていて、今度近衛騎士団の方に戻るそうだ。

 

俺は双剣とエクスカリバーを手入れし、旅路の為の準備をしていたが、

ショウ「ゲイル、ゲイル!」

突然ショウが訪ねてきた。

ゲイル「どうした?」

ショウ「ジョアンが消えた」

ゲイル「どういう事だ?」

ショウ「実際には置き手紙で『探さないで下さい』って書いてあったそうだ」

ゲイル「あのジョアンがねぇ…」

ショウ「これはチャンスだぜ!」

ゲイル「チャンス?」

ショウ「ソフィアの事だよ!」

ゲイル「それは出来ない」

ショウ「なぜ!?」

ゲイル「ソフィアは、俺と一緒にいたら駄目なんだ。彼女を幸せに出来るのは俺じゃない……」

ショウ「そうかよ。だったら勝手にしろ!あとで後悔しても知らないからなっ!」

ショウはゲイルの部屋のドアを蹴って帰っしまった。

ゲイル「………わかっているさ!わかっているけど、俺には何も出来ないんだよっ!」

ピコ「ゲイル………」

 

それから、残り一週間も無いドルファンでの生活を送った。

そして、叙勲式が翌日へと近づいていた。

 

続く……


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