第4話『逆転を継ぐ者』七年前の法廷(その5)

表セリフ集一覧に戻る

王泥喜 法介…紺
成歩堂 龍一…黒
成歩堂 みぬき…赤
裁判長…緑
牙琉検事…茶
宝月 茜…桃
絵瀬 まこと…黄緑
絵瀬 土武六…灰
或真敷 バラン…薄橙
葉見垣 正太郎…橙
或真敷 ザック…青
糸鋸 圭介…黄土
原灰…黄
ラミロア…藤
牙琉 霧人…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


←この前のセリフ


成: (‥‥イヤな予感はしていた‥‥
手記の”破り取られた跡”‥‥
‥‥あの検事が、
気づかなかったハズがない‥‥
‥‥イヤな予感は
していたんだ‥‥)

裁: ふむう‥‥この私も、はじめてです。
”傍聴人のいない法廷”‥‥
牙: ‥‥ムリを言ってしまって
モウシワケない。
この証人とは、”司法取引”を
しているんだよ。
成: しほうとりひき‥‥
牙: なにぶん、証言の内容が
ビミョーなんでね。
こうして”人払い”を
おねがいしたわけさ。
裁: ふむう‥‥それで。
あなたが、その証人‥‥ですか。
?: あ‥‥は。はい。
牙: ‥‥それじゃあ。
職業と名前を教えてもらおうか。
土: ええ‥‥絵瀬 土武六と申します。
職業は‥‥絵を描いております。
裁: 画家‥‥ですか。
事件の関係者なのですかな?
土: いや‥‥その。
そういうワケでは‥‥
牙: ‥‥この証人に対する質問は、
とってもシンプルなものだよ。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
牙: ‥‥土武六さん、だっけ?
あんた、これを知ってるかい?
土: ああ‥‥はい。
モチロン、よく知っておりますよ。
成: ‥‥なぜ、ですか?
この”手記”を、
見たことがあるのですか‥‥?
土: ああ、はい。何しろ‥‥
私が作ったモノですから。
成: な‥‥なんと言いました?
”アナタが、作った”‥‥?
土: ‥‥そうです。
それは、私の”作品”ですね。
牙: ‥‥きのう。地方検事局に、
ある”情報”が入った。
<<魔術師・或真敷 ザックの法廷で、
不正な証拠が用意されている>>
裁: 不正な‥‥”証拠”‥‥
牙: ワレワレの独自の捜査で、
この証人に行きついた。
絵瀬 土武六氏は、ある
”ウラのカオ”を持っているのさ。
ある”もの”を、カンゼンに
”再現”する‥‥
いわゆる”贋作”を
手がけている、と。
成: が‥‥がんさく‥‥
裁: で‥‥では。つまり、コレは‥‥
この、手記のページは‥‥
牙: ニセモノさ。
どこかの弁護士が用意した‥‥ね。

(成歩堂「異議あり!」)
成: 待ってください!
この証拠は、ぼくが
用意したものじゃないッ!

(牙琉検事「異議あり!」)
牙: ‥‥今さら、何を言ってるんだい?
この証拠を、法廷に持ち出したのは、
他のダレでもない‥‥
成歩堂 龍一弁護士!
あんた自身じゃないのかな!
裁: ‥‥証人ッ!
土武六さん‥‥でしたか?
あなたに<<偽造>>を依頼したのは
‥‥ダレだったのですかッ!
土: さあ‥‥
わかりかねますな。
成: なんですって‥‥!
土: キホン的に、依頼人のみなさまは
カオは見せたがりません。
私としては、”作品”を作り、
それで”代金”をいただく‥‥
それだけのコトですから。

(成歩堂「異議あり!」)
成: し。しかしッ‥‥!
これが、ニセモノである証拠は‥‥
土: ニセモノです。
成:え‥‥‥
土: こういうモンダイを避けるため‥‥
”作品”には、特殊なマークが
入っております。
まちがいなくこれは。
私の”作品”です。
裁: 弁護人‥‥‥成歩堂くん。
あなたが‥‥この法廷に、
不正な証拠を持ちこんだ‥‥

成: (‥‥うかつだった‥‥
‥‥そう言うしか
ないかもしれない‥‥)
み: 『あ。そうだ! ‥‥オジちゃん!
あの。あの‥‥コレ。』
成: 『これは‥‥?』
み: 『わかんない。
今、そこの廊下で、もらったの。
<<アタマのトガった、青い服の
オジちゃんに渡してくれ>>って。
すごーくダイジなものなんだって。』
成: (ワナだった‥‥すべて。
それも、致命的な‥‥)

裁: ‥‥弁護人。
成:はい。
裁: 何か、弁明はありますか?
成: 弁明したとして‥‥
受け入れられるのでしょうか?
裁: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ムズカシイでしょうな。
証拠品の”ねつ造”は、
重罪です。
‥‥そもそも、法廷に
提出してしまった時点で‥‥
すでに弁護士として、
致命的なミスと言えます。
牙: そして‥‥それは、アンタの
依頼人にも言えるコトだよね。
成:‥‥!
牙: ”偽造”された証拠品を
必要とする、被告人‥‥
‥‥それが意味するところは、
あまりにも明白だね。
そう! ‥‥<<有罪>>さ!

(成歩堂「異議あり!」)
成: ‥‥待ってください!
偽造された証拠を持ちこんだのは
”重罪”にあたるかもしれません。
しかし! それは、
ぼく個人がやったことであって‥‥
裁: ‥‥非常に、残念です。
成歩堂くん。
成: ‥‥裁判長‥‥
牙: アブナイところだったよ。
‥‥ジッサイ。
もし、検事局に”情報”が
入ってこなかったら‥‥
弁護士さんの思惑どおりになった
かもしれないワケだからね。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥
牙: ‥‥だから、言ったのに。
ハジをかく前に、もう一度。
よく考えてみろ‥‥ってね。
裁: これ以上の審理は認めません。
特別証人の尋問を終了します!
土: ‥‥弁護士さん。
成: なんですか。
土: あなたの名前を
教えていただけませんか。
成: ‥‥‥‥?
成歩堂 龍一、ですけど。
土: 成歩堂さん‥‥
あなたは、印象的なヒトでした。
よく、おぼえておきます。

裁: ‥‥このようなカタチの判決に
なるのは、ザンネンですが‥‥
本法廷は、これ以上の審理を
認めるワケにはいきません。
ザ: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
裁: あなたには、弁護士を替えて、
上告するケンリがあります。
しかし。この法廷では‥‥
ザ: ああ‥‥裁判長さん。
裁: ? な。なんですかな?
ザ: ヒトツだけ、
ハッキリさせておこうか。
今日。この場で‥‥
キミたちは、この私に
<<有罪判決>>を下すコトはできない。
‥‥そいつは、不可能なんだ。
裁: ‥‥どうも、ご自分の立場が
わかっていないようです。
その権限は、私にあるのですよ。
ザ: しかし‥‥
あなたにも、不可能だと思うよ。
”存在しない”被告人に
判決を言いわたす、なんてね。
裁: ”存在しない”‥‥?
ど。どういうことですかな?
ザ: そいつは‥‥‥‥‥‥
こういうことさ!
成: な‥‥奈々伏さんッ!
牙: 被告人が逃げたッ!
追うんだ! 早くッ!
裁: 係官! すべての出入り口を
封鎖するのですッ!

(ざわめきが起こる)
裁: 大至急! ゼッタイに
逃がしてはなりませんッ!


‥‥この日、
裁判所に奇跡が起こった。
法廷から逃亡した
被告人・奈々伏 影郎は‥‥
信じられないことに、裁判所内から
文字通り”消失”した‥‥
彼を追跡した係官の目の前で、
その姿はコツゼンと消え‥‥
そして、それ以降。
彼の姿を見たものはなかった。
ザ: ‥‥これが、或真敷の奇跡さ。
はっはっはっはっはっはっ‥‥

判決が下されることはなかった‥‥
‥‥当然だ。被告人が
”存在しない”のだから。
こうして‥‥
魔術師・或真敷 ザックの審理は、
彼の消失とともに、永久に失われた。
‥‥そして。
その謎が解けるまでには‥‥
じつに、7年の歳月が
必要だったのである。


次へ→