第1話『初めての逆転』(後編)

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成歩堂 龍一…黒
綾里 千尋…赤
矢張 政志…紺
裁判官…緑
亜内検事…茶
山野 星雄…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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山: ‥‥‥‥‥‥
へ‥‥へっ!
あんた、1つ見逃してるよ!
成: (‥‥え。
な、なんのことだ‥‥?)
山: たしかに、その時計は
2時間、遅れてるみたいだな。
だがな‥‥。
その時計が、事件当日にも
遅れていたかどうか、
その証拠がないかぎり、
証明したことにはならねえぜ!
成: ‥‥‥‥!
(‥‥そんなこと、証明
できるワケがないじゃないか!
クソッ! あと
1歩だっていうのに‥‥!)
裁: 成歩堂くん。
‥‥どうやらあなたは、それを
証明するのはムリなようですね。
成: ‥‥!
‥‥は、はい‥‥
裁: となると、山野さんの言うとおり、
彼を告発することはできません。
‥‥ザンネンですが、ね。
ではこれにて、山野 星雄氏に
対する尋問を、終了します!
山: ヘッ! ヒトがわざわざ証言しに
来てやったっていうのに、
ハンニン呼ばわりかよ!
まったく弁護士ってのは、
ヒドい連中だぜ!
成: (くそっ! ‥‥山野め!
すまない! 矢張‥‥。
もう少しだったのに
ぼくにはもう、
どうしようもない‥‥)
千: 待ちなさい! 山野星雄!
成: ち、千尋さん!
千: なるほどくん!
ダメよ! ここであきらめちゃ!
‥‥考えましょう!
成: でも、もうムリだよ千尋さん!
事件があった日に、時計が
遅れていたかどうかなんて、
今さら、証明しようがない!
千: そ、‥‥そうね‥‥。
じゃあ、いっそのこと
発想を逆転させましょう!
<<あの時計が、事件当日も
2時間遅れていたかどうか>>‥‥
‥‥そう考えるのではなく、
そもそも、あの時計が、
<<なぜ2時間も遅れていたのか?>>
その理由を考えてみるの!
なるほどくん!
あの時計がなぜ、2時間
遅れていたか、わかる?

(「はい」を選択)
成: ‥‥
‥‥‥‥あ!
はい、それなら
たぶん、わかると思います。
千: あなたは、それを証明する
証拠品を持っているはずよ!
それをつきつけてやりましょう!
裁: どうですか、成歩堂くん。
事件があった日には、時計はすでに
遅れていた‥‥。
それを証明することが
できると言うのですか?
成: ‥‥もちろん。
ある証拠品で、
それを証明できると思います。
山: ほお! ‥‥できるもんなら、
やってみな!
裁: では、時計が遅れていた理由を示す
証拠品を提示してもらいましょう!

(「パスポート」をつきつける)
成: 被害者は、事件の前日、
帰国したばかりでした。
ニューヨークと日本では、
14時間の時差があります!
日本で午後4時のとき、
向こうでは前日の午前2時。
時計で見れば、その差は
ちょうど、2時間になります!
被害者は、帰国後、時計の時差を
まだ戻していなかったのです!
だから、あなたが聞いた時間は、
2時間ズレていたんだ!
どうですか! 山野さん!
山: ‥‥ぐ。 ‥‥‥‥‥‥!

(ざわめきが起こる)
裁: せ、静粛に! 静粛に!
‥‥さて。
ここへ来て、状況は
一変したと言っていいでしょう。
亜内検事。
山野 星雄は‥‥?
亜: は、あの‥‥先ほど
緊急逮捕いたしました。
裁: よろしい。
‥‥成歩堂くん。
成: はい。
裁: ‥‥正直に言って、驚きました。
こんなに早く、依頼人を
救い出した上、
真犯人まで探し出すとは‥‥。
成: ありがとうございます‥‥。
裁: とにかく、今となっては
形式にすぎませんが、
被告人、矢張 政志に
判決を言い渡します。


(無罪判決)

裁: ‥‥では、本日はこれにて閉廷!

成: 山野という男は、空き巣の
常習犯だったらしい。
新聞の勧誘をしながら、
留守の家を狙っていたという。
あの日。
矢張が部屋を訪ねたとき、
被害者は留守だった。
彼が立ち去った後、山野は
”仕事”をするため、部屋に侵入。
そして部屋を物色中、
被害者が帰ってきたのだ。
逆上した山野は、そばにあった
置物を手に取って‥‥


8月3日 午後2時32分
地方裁判所 被告人第2控え室

成: (‥‥うう。ぶじに終わったなんて
まだ信じられないよ‥‥)
千: なるほどくん!
やったわね!
おめでとう!
成: あ、ありがとうございます!
‥‥ホント、所長のおかげです。
千: ううん。
そんなことないわ。
とにかく私、ひさしぶりに
スカッとしたわ!
成: (こんなにニコニコしている所長、
初めてだ。
そうだ! 矢張のヤツも
よろこんでるだろうな‥‥)
矢: 死ぬんだぁ‥‥。
成: な、なんでおまえが
そんなカオしてるんだよ!
矢: 成歩堂ぉ‥‥。
オレ、そろそろ死ぬからさぁ。
成: い、いやいやいや。
おまえは無罪になって、
事件は終わったんだよ、矢張。
矢: ‥‥‥‥
でもよぉ、‥‥美佳は
帰ってこないんだよなぁ‥‥。
成: (‥‥矢張‥‥)
千: おめでとうございます、
ヤッパリさん。
矢: ヤ、”ヤッパリ”‥‥?
千: どうかしましたか?
ヤッパリさん。
矢: いや、あの。なんつーかその、
ホント、ありがとッス。
オレ、一生忘れねーから。
千: ‥‥まあ。
成: (おい、助けたのはぼくだぞ‥‥)
矢: あ、そうだ。
こ、これ、プレゼント!
‥‥受け取ってください!
千: あら。‥‥私に?
あの‥‥。
でもそれ、証拠品じゃあ‥‥?
矢: 実はコレ、オレがあいつのために
作ってやった時計なんスよ。
あいつのと、オレのとで
2個、作ったんス。
千: まあ、あなたが作ったの、これ?
‥‥‥‥
そうね。
‥‥じゃ、記念にいただくわ。
矢: ‥‥でもよぉ、成歩堂‥‥。
オレ、こんなにアイツのこと
想っていたのに、
あの女にとってオレ‥‥、
ただのオモチャだったんだよな。
すげぇ、カナシイよぉ‥‥。
成: 矢張‥‥。
千: ‥‥‥‥
私、そうは思わないけど。
矢: ‥‥え?
千: 彼女は彼女なりに、あなたのことを
想っていたはずですよ。
矢: ハッ!
‥‥な、なぐさめなんて‥‥。
千: あら、それはどうかしら。
ねえ、なるほどくん?
‥‥わからず屋の彼に、
彼女の気持ちがわかる証拠を
見せてあげて。
成: は、はい?
‥‥あ、そ、そうですね。
(い、いきなり
言われてもなあ‥‥)

(「置物」を選択)
成: 矢張、これ‥‥。
矢: な、なんだよ‥‥。
この時計がどうかしたか?
成: これ、お前の手製の
オリジナル時計なんだよな。
彼女、こいつといっしょに
旅行に行ってたんだぜ。
矢: は、はん。
たまたま時計がなかったんだろ?
成: それだけで、わざわざこんな
重いものを持っていくか‥‥?
矢: ‥‥‥‥
成: まあ、何をどう考えるかは
お前しだいだけど。
矢: ‥‥
成歩堂。
今回のコト、おマエにたのんで
よかったよ。
‥‥ホント、ありがとな。
成: (‥‥これでよかったのかな‥‥)
千: ‥‥なるほどくん。
証拠品て、こういうものよ。
見る角度によって、その意味合いは
どうにでも変わってしまうわ‥‥。
人間だって、そう。
被告が”有罪”か”無罪”か?
私たちには、知りようがない。
弁護士にできるのは、
彼らを信じることだけ。
そして彼らを信じるということは、
自分を信じるということなの。
‥‥なるほどくん。
強くなりなさい。‥‥もっと。
自分が信じたものは
最後まで、あきらめてはダメ。
‥‥じゃあ、
私たちも帰りましょうか。
成: そうですね。
千: 今夜は私、パーッと
ごちそうしちゃおうかな。
ヤッパリさんの無罪を
お祝いしましょう!
成: はい!
千: あ、そうだ。
‥‥ヤッパリさんといえば、
あなた、彼のおかげで弁護士に
なった、って言ってたわよね。
成: え、は、はあ。
‥‥”ある意味”ですけど。
千: 今度、聞かせてね、その話。
‥‥ものすごく興味があるの。
成: ‥‥こうして、ぼくの最初の事件は
幕を閉じた。
矢張のヤツ”トモダチはいいなあ”
を連呼しつつも、
あの<<考える人>>の時計以外に、
依頼料を払う気はないようだ。
‥‥‥‥
そして、あの時計は、
再び、とんでもない事件を
引き起こすことになり、
”矢張のことを話す”という
ぼくの約束は、
永久に守られることはなかった。


おわり


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