奇稲田アスタ作品集

第3回


瞬く間に日にちは過ぎ、日曜日なった。

俺はいつもの様に早めに宿舎を出て、一路待ち合わせ場所へと足を進めた。

昼過ぎのせいか、街中は活気に包まれている。

その街中を抜けようとした時、ふと、見覚えのある女の子を見かけた。

ライトブラウンの髪の毛。黄色いリボン。赤で揃えたジャケットにスカ−ト…。

もしかして…?普段会えないとこの世の終わりみたいに落ち込むくせに、

こういう時にはなるべく会いたくない女の子…

「あら…?お散歩ですか?アスタさん。」急に声をかけられた。

俺が考えを巡らせている内に、彼女が俺の前に来ていたらしい。

と、言う事は、既に俺に気付いていたんだ…。素直に喜べないのが悔しい。

「やっ、やあソフィア…。き、奇遇だね…。はっ、アハハハ…」

妙にどもる。後ろめたさを感じているせいか声まで裏返る。俺の口元はかなり引きつっていた事だろう…

そんな俺を見て、ソフィアが軽く首を傾げる。そういった何気ない仕草が本当に可愛い。

しかしこれ以上顔を弛める訳にはいかない。自分の中での葛藤が始まる。

「あの、アスタさん?どうしたんですか?様子が変ですけど…」

変なのは日常茶飯事…。いやいや、そんな事言ってる場合じゃない。

「いや、何でもないんだ。それよりどうしたの?」なんとか自我を保った俺は、

冷静さを取り戻すようにソフィアに問いかけた。

「えっ…?あっ、そうでした。私、父の用事で此処に来てたんです。そしたらアスタさんの姿が見えたもので……」

そう言って頬を染める。そして恥ずかしげに俺の方に視線を向けた。

可愛い!本当に可愛い!彼女に愛を誓った俺の人生に悔いなし!

「ところでアスタさんは此処で何をしてらっしゃるんですか?」

へっ!?ああっ!しまった!今日はアンとのデートだったんだ。つい当初の目的を忘れる所だった。

しかし、ソフィアにこの事を告げたらどうなる?俺は一生立ち直れなくなるぞ…

(いや、しかし…)再び葛藤する俺。そんな中、俺の口から出た言葉は、

「いっ、いや…。天気がいいものだから、ちょっと散歩しようかなって…」だった…。

俺は彼女に対して嘘をついてしまったのだ。

しかし、彼女は俺の言葉を信じたらしい。何の疑いもなく俺を見ている。

「そうなんですか?あっ、いけない…。私、用事の途中でした。それじゃ失礼します。」

そう言って頭を下げると俺の元から歩き去った。

(はあ…良心が痛む…。でも約束だしなぁ…。ソフィア、本当にゴメン。)

こうして俺は、アンとの待ち合わせ場所へと急いだ。この後に起きる悲劇にも気付かずに…

       続く…

次回予告

さ〜ぁてっ!明日のリプレイは?

アナゴです。僕フグ田くんの同僚なのに出番少ないんですよ。

どうでも良いけど 僕達出世出来ないのかなぁ?

さて次回は…

「カツオの高校受験」「ワカメの結婚前夜」「タラちゃん変声期」の3本です。

次回もまた見て下さいね。ふっがぐぐ・・・。


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