奇稲田アスタ作品集

第2回


この地に足を踏み入れてから3年の歳月が流れようとしている。ドルファンに来てから3回目の秋を迎えた。

何故かしら感傷的になり、人恋しくなるのは何処の国でも同じなのか……

そんな折り、街中を散歩していると、不意に背後から声をかけられた。

「あっ、あの…。アスタさん……」

聞き覚えのあるオドオドした口調。それでいて透き通る様な声。

俺が振り向くと、エメラルドブルーの髪の毛が視界に飛び込んできた。

「あっ、アンか。どうしたんだ?」俺は努めて優しく問いかけた。

でないと彼女が逃げ出してしまいそうだったからだ。

「すっ…すいません…。呼び止めてしまって…」

彼女は些細な事にまで謝罪する。そこが彼女らしいのだが…。

しかし、彼女はそれ以上喋ろうとしない。俺が次の言葉を待っていると、決心したかの様に口を開いた。

「あっ、あの…。今度の日曜日…私と・・・。」

「私と?」俺は、思わず聞き返してしまった。

「私と…、海を見に…行きませんか…?」

そう言うと、頬を真っ赤に染めながら俯いてしまった。身体が微かに震えている。

彼女にしてみれば、勇気を振り絞った行動なのだろう。

俺は、彼女の言葉に答えるように返事した。

「ああ、いいよ。」するとアンは、恥ずかしげに顔を上げた。頬が更に朱身を帯びている。

心なしか瞳も潤んでいるように見えた。

「ほっ、本当ですか?有り難う御座います。」嬉しそうに微笑むアン。

「私…、今度の日曜日楽しみにしています。それでは、失礼します。」

そう言って、深々と頭を下げると街中へと歩み去った。

その背中を見つめながら(ソフィア…ゴメン…)と心の中で謝罪した。

ソフィアに対する罪悪感から逃れようとする自分が情けなかった。

しかし、この時点で俺は、神から見放されていた…

続く…

次回予告

心に棚を作りアンとのデ−トへ向かうアスタ。

しかし、彼の行く末にはまたしても(笑) 過酷な運命が待っていた。

次回『ドルファンの中心でアイを叫んだケダモノ』

さーって、明日もサービス、サービスぅ!(爆)


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