奇稲田アスタ作品集

第17回


「だが、貴様では役不足だ!死ねえっ!」

奴の一撃が俺の脇腹の辺りをを捉えた。

鎧によって衝撃は和らいだが、その鎧を貫いて刺さっている。

鎧を着ていなかったら、確実に背中まで貫き通されていただろう。

「ぐうっ…」

怯んだ俺に、奴の執拗な攻撃が浴びせかけられる。

「これで終わりだぁっ!」

言い放つと同時に、槍を縦横無尽に突きだし始めた。その槍先からは無数の火炎弾が射出される。

襲い来る火炎弾が身体を蝕み始めた。咄嗟に剣で防ごうとしたが、何発か直撃を受けた。

「うぐっ…ぐはぁっ!!」

激痛が走り、灼熱が全身を襲う。鎧が煤け始め、露出してる部分に軽い火傷を負う。

俺は思わず片膝をついた。奴を睨み付けるにも、頭部から流れてきた血によって右目を潰され、

朦朧とした意識の中、左目も霞んできた。

(殺される…)

初めて『死』に対する恐怖を感じた。

人は、死に直面した時、信じられない力を発揮すると聞いた事があるが、今の俺には為す術が無かった。

死を覚悟して、頭を下げようとしたその刹那、奴の鎧に一筋の鈍い光を見つけた。

その光は、さっき俺が付けた傷跡だった。その傷跡が、太陽の光を反射して、鈍い光を放っていたのだ。

あれを狙えば…

「うっ…、くぅっ…」

「ほう…まだ立ち上がるか。ならば、この一撃で殺してやるっ!」

剣を杖代わりにして、どうにか立ち上がった俺に向かい奴が突進して来た。

槍を中段に構え、確実に心臓の辺りを狙っている。

俺が剣を構え直した時には、奴の槍が射程距離を捉えていた。

「死ねぇぇぇぇいっ!」奴の槍が突き出されると、無我夢中でそれを握りしめた。

心臓まで、あと数センチという所で食い止めつつ、奴を睨み付ける。

この闘いで初めて、奴に驚きの表情が浮かんだ。

そして、奴の鎧に視線を移し、さっきの傷跡を確認した。

もう片方の手で剣を握り、その傷跡目掛け、渾身の力を込めた一撃を放つ。

金属に阻まれた後、肉を斬る鈍い感触が掌を伝わってきた。

その直後、俺の剣を伝うように奴の血が流れ始め、剣の柄から地面に滴り落ちた。

「ぐふぅ…。きっ、貴様ぁぁぁぁぁ…!!!」忌々しげに呻く。

奴の足下には、流れ出た血による血溜まりが出来始めている。

奴の手を放れた槍は、その血溜まりに落ちると、金属音を響かせながら何度か弾み、その血に委ねられる様に静止した。

俺もいつの間にか剣を手放していた。殆ど気力のみで立っていたらしい。

「ヤングよ…良い部下を持ったな…」

そう言い残して、胸に剣を刺したまま地面に倒れ伏した。

真紅の鎧が、奴の鮮血によって、より一層紅く映える。

それを見届けた後、俺も意識を失い地面に倒れ込んだ。

周りで俺の名前を呼ぶ声が響いているみたいだが、それすらも段々聞こえなくなってきた…

 

続く…

 

次回予告

ライズ「ぷはぁっ!ホントこのジュースって…マズッ!!!」

アンはよ気付けやっ!!どうして、飲みきってから気付くんですか?」

ライズ「アホーーーッ!!!」

アン「ゲフフン!!!」

ライズ「ワンテンポ遅らす一人時間差が、オシャレやないけーっ!アホーッ!」

アン「イミ分からんわーっ!」

ライズ「そう言う訳で、次回『汗をかくのってキライよ♪』にテレポートッ!」


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