贈り物

〜その3〜「なくせない物」

著:おタクろ〜


「…浮かれていると、思わぬケガをするわよ」

 

今朝、森林区へ来る途中…一人の女の子に言われた言葉。

浮かれていたワケじゃないんだけど…

 

「ゴォォァァァア!」ブン!

「どわぁ!」

バコォ!…紙一重でかわした“平手打ち”が岩を砕く。

「何やってんだ!反撃しろ反撃!」ムチャ言うなよ…

去年退治したはずの熊…森の中でばったり出会ってしまい、また戦うことに…

「はぁぁぁっ!」ブン!

こちらの攻撃はかわされる…一度は退治したはず…なのになぜ苦戦する?

むこうは正確に攻撃してくる…バキィ!

「いやぁ…なかなか面白いモデルだ、躍動感のある良い絵が描けるぞぉ」

うー…勝手なコトを…

「ねぇ…この子、首輪してない?」

「くま」と書かれたおしゃれな首輪…だれだよ!こんなヤツを飼い慣らしたのは…

ドカァ!

飼われていた…とゆうより鍛えられた一撃!

「っ…だめだ!逃げるぞ!」

本気を出せば勝てるかもしれない…だけど“女の子を守りながら”となると自信がない。

なんとか相手の攻撃をかわしながら、レズリーと二人で逃げ回る。

「見つからないね…銀色蝶」

ピコはマイペースに捜し物…もう一人は途中で立ち止まり、絵を描きながら逃げている…

「もう、いい加減にしてくれ〜!」

 

―何時間経ったのだろう?―

「くま」とゆー名前の熊を振り切り、綺麗な小川の横で一休み…

ぜぇっ…ぜぇっ…

「だらしないなぁ」

「先週女の子が見てるって張り切るからダヨ…」

「おまえらなぁ…俺は一番重い鎧を着たまま走ったんだぞ!息ぐらい…上がって当然だ!」

「おまえらって…二人きりだぞ、ついに幻覚を見るようになったか?」

「もーいいっ!俺は寝るっ」

「んじゃ、私は絵を仕上げるとするか…」
 

小川のせせらぎ、涼しい風…傍らには絵を描く彼女。

ココだけ見るとデートみたいなんだけどなぁ…

 

「ねぇ!ねぇ!!ねぇ!!!」けたたましいピコの声。

う…うるさい…少しぐらい休ませてー…

「見つけたよ!銀色蝶!」

小川の向こう側、銀色と言うより鏡のように輝く羽を持つ蝶が…

「あ…」レズリーも気がついたようだ…

「ロリィ!何やってんだ!!」

「え?」

「あ〜お兄ちゃんとお姉ちゃんだ!やっほ〜」

なんで?なんでこんな所に?

「見て!見て!あの蝶々、ロリィが捕まえるからね!」

「よせ!」レズリーの声を無視して、銀色蝶に近づくロリィ、その先には…

「えいっ」虫取りアミは見事に銀色蝶へ…グラッ…ロリィが傾いたかと思うと…

ドボーン!!

川の中へ落ちた?

「くそっ!」あわてて川へと飛び込むが…

―体が重い?―

必死に水をかき、先へ進もうとするが体が言うことを聞かない。

俺には助けられないのか?

 

―『ただ愛した人の仇を討つのみ!』―

結局…傭兵には人殺ししかできないのか?

 

「あのバカ、何やってんだ!」

「…お姉ちゃん!」

ロリィの声を聞いたレズリーもフラフラと川のほうへ。

「ああっ!ダメだよっ」だがピコの声は聞こえない、俺以外には…

二人ともロリィのコトだけを考えて、自分が何をやっているのか、わからなくなっていた。

 

「一人でこんな所へ来ちゃイケナイって、いつも言ってるだろう?」

「だって…だって…」

「レズリーも人のこと言えないぞぉ…以外と浅かったから良かったけど」

「鎧を着たまま飛び込むヤツよりはマシだ…」

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

「そんなにお金がほしかったのかい?…言ってくれればコノお兄ちゃんが…」

…おい…

「筆…エアブラシって筆をお姉ちゃんにプレゼントしようと思って」

照れながら答えるロリィ。

「ロリィ、おまえ!」

(…俺達はお呼びじゃなかったらしいな)

「うん、でも良かったじゃない」

 

「ごめんなさい…ロリィのせいで、せっかく描いた絵がグチャグチャに」

「あ?…気にするな、絵なんてまた描けばいい。ロリィの代わりは無いから…な!」

ロリィのほうへと向いていた目を今度は俺へと向ける。

「無くなった物はまた作ればいい!命まではどうしようもないけどな…。

 熊から私を守ったのはあんたなんだ…何も無いなんて言うなよ」

俺は彼女たちに何かしてやれたのか?

「タダおぼれていただけなんだから…ホメすぎだよ」

(悪かったな!)

「そーだ!今度はロリィをモデルに描くよ」

「本当?お姉ちゃん!」

「この前…ひどいこと言っちゃったお詫びに」

「うん!」

 

―あれからしばらくして、俺はロリィにつれられて何かの展示会へ―

 

『戦場』『勝利』『勇気』『強さ』色々な題名の絵が並ぶ。

敵を一刀のもとに両断する戦士。勝利の凱旋に酔いしれる英雄。

死体の山の中、討ち取った首をかかげて勝ち名乗りを上げる騎士。

戦意を向上させるような絵が並ぶ中…

一枚だけ可愛らしい少女の笑顔があった、題名は『何よりも大切なモノ』。

その絵には戦争で無くしてしまう物、戦争をしてでも守りたい物が描かれていた。

そして、俺が守りたいと思える物…俺の誇りがそこにあるような気がした。
 

―THE・END―

 

オマケ

「『くま』ってだれが飼っていたのかな?」

「さあ…?俺にわかるかよ」

 

「くま…どこ?始めるわよ」

ガァ…

「あら、見慣れないケガがふえてるのね…? そう、一人で訓練していたの?フフッ…偉いわ…」


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