システィーナ礼拝堂500年祭記念
ミケランジェロ展
天才の軌跡

2013年9月

上野公園にて

 2013年の日本におけるイタリア年のルネサンス3大巨匠の特別展(ラファエロ展レオナルド・ダ・ヴィンチ展)のラストを飾るミケランジェロ展を見学しました。

 開場10分前に国立西洋美術館前に到着すると、そこは長蛇の列。上野駅側から角を直角に国立科学館側へ直角に曲がって10数mの列の最後尾に並びました。今回のミケランジェロ展には、ミケランジェロの油絵は1点も出品されていないので、こんなに混んでいるとは予想外でびっくりしました。
 ロッカーに荷物を預けて見学スタート。

 最初の展示室から、か〜な〜り混雑。ご挨拶の文を読んでから、最初の出品作のマルチェッロ・ヴェヌスティに帰属する「ミケランジェロの肖像」の前に立ちました。
 この胸から上のミケランジェロの肖像画から推測すると…正直言ってこれがミケランジェロ?!と驚きを禁じられませんでした。ミケランジェロの彫刻や絵画の筋肉ムキムキの人のイメージで、ミケランジェロも筋骨隆々な方と勝手に思い込んでいたようです。これがミケランジェロとよく紹介されるラファエロの「アテネの学堂」に描かれたミケランジェロも、そこそこの体格だったような…。それが、この肖像画から受ける私的なイメージは、“肉体美”とか“恰幅が良い”とかの言葉とは対極のイメージ。作品に表される人間とと本人は別ってことでしょうか。

国立西洋美術館前
「レダの頭部習作」

 「レダの頭部の習作」の隣りに、今は失われたミケランジェロ作「レダと白鳥」の模写だか、模写の模写だか、模写を参考にしたのか、どれだったか忘れてしまったフランチェスコ・ブリーナに帰属する「レダと白鳥」が展示されていました。ミケランジェロの「レダと白鳥」は焼却されてしまったらしいけど、現存していたら、このフランチェスコ・ブリーナに帰属する「レダと白鳥」はそれを少しは写しているのでしょうか。白鳥がレダにキスしている絵でした。う〜ん、色っぽい?

国立西洋美術館チケット売り場前
「クレオパトラ」

 ミケランジェロが甥のレオナルド宛に書いた手紙が数葉、出品されていました。イタリア語なので、全然読めないですけど、受けた印象は「綺麗な文字」でした。流麗な筆記体は飾り文字のようです。簡単な要約は、手紙の脇に設置された解説に書いてありますが、あまりに簡潔にまとめられているので、それだけでは手紙を書いたミケランジェロと甥のレオナルドの交流がどのようなものであったか推測が難しい気がとてもしました。

 次の展示は私的なメインなシスティーナ礼拝堂天井画の習作たち。2009年10月のイタリア旅行システィーナ礼拝堂を見学しているので、そのとき見学したオリジナルを思い出します。
 システィーナ礼拝堂天井画のための習作たちは、身体の一部が様々な動きを表して描かれていて、思わず自分の腕でその動きを気持ちだけ真似てしまいました。そう、この辺までくると、ギャラリーは激混みから解放されていて、少し腕を捻る程度の余裕はありました。
 ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の祭壇画の「最後の審判」の習作の後、「最後の審判」の何分の1かのコピーが展示されていました。何分の1かに縮尺してあるのに、天井までいっぱい。オリジナルの大きさが伺えます。その後に、この「最後の審判」に基づいてたくさんの部分に分けられて刷られたジョルジョ・ギージの版画が、展示されていました。版画を見て、コピーを見て、双方を見比べて、ミケランジェロの「最後の審判」を見ただけでは気づかなかった骸骨の存在など、いろいろな点に気づけました。この試み、私的には、とっても面白かったです。

 面白かったものがもう1つ。それは、グスターヴォ・トニェッティの「ミケランジェロによる改築以前のシスティーナ礼拝堂(復元図)」。内部の仕切りはそのままでも、天井は全然違いました!私的には、星が描かれているような感じがしましたが…果たして…。

上野公園にて
「階段の聖母」

 原寸大なら四国の大塚国際美術館で陶板で作られたシスティーナ礼拝堂があったね〜と同行者と話して、展示室を先に進んだら、その大塚国祭美術館から原寸大の「デルフィの巫女」(システィーナ礼拝堂天井画の一部)が展示されていました。思わず同行者と顔を見合わせてしまいました(笑)。「デルフィの巫女」、座っていても私たちより大きかったです。オリジナルの天井画の大きさが偲ばれます。

 「階段の聖母」はミケランジェロが15歳のときの作品だそうです。これを15歳で彫ったですか。薄い浮き彫り。まだ筋肉美ではないようです(笑)。

上野公園にて
「キリストの磔刑」

 そして最晩年の作品にして完成前にミケランジェロが他界してしまったため未完の「キリストの磔刑」。私は、これを見て、瞬間的に「仏像に通じるところがある」と思えました。片手で握れるくらいの小さな作品ですが、何だか、その前に立つと自然と頭を垂れて手を合わせたくなってしまいます。

 「クレオパトラ」は、自決する前の決意と全てを受け入れた静謐な表情。でも、裏打ちをはずした裏側に描かれたクレオパトラの顔は、私的に思わず「不細工…」とつぶやいてしまったものでした。見た後で解説を読むと、裏側のクレオパトラは敗戦を死を受け入れ難い心の内面を表しているようです。クレオパトラの表と裏。美と醜。
 それにしても、裏打ちされていたのを、よくこれだけ綺麗に裏に描かれた絵を傷めずに剥がせたものです。すごいなぁ。
 一通り見学し終えて、展示室を前に戻り、「レダの頭部の習作」から、ざっと再見学。そのとき、書簡の展示室の中央部のソファに冊子がいくつか置かれていました。その中にミケランジェロが書いた、または、ミケランジェロ宛の手紙の完全日本語訳があるのを発見しして、目を輝かせて一生懸命読みました。手紙の完全日本語訳、ありがたいです。こういうのって手紙の書き手と読み手の親しさ度合いが判るので、とっても嬉しいご配慮でした。でも、教皇さまとのやりとりが興味深かったりしました。

パンとサラダと
ミネストローネ


ビーフ・ステーキ
(フィレ)

 ミュージアム・ショップで「レダの頭部習作」と「階段の聖母」の絵はがきとシスティーナ礼拝堂天井画のクリアファイルと「食べ物のスケッチと3種のメニュー」のトートバッグを買い、ショップを出たのが11時5分。

 見学の所要時間は1時間30分。

 ランチは、いつもの国立西洋美術館のレストラン。
 今回、「肉は、フィレとサーロインのどちらにしますか」とウェイトレスさんに訊かれました。この会話は初めて。なので、同行者とフィレとサーロインを1つづつ取って半分ずつ味見。「次からはフィレ」で意見が一致しました。ちなみに、これまで訊かれずにサービスされていたお肉はフィレだと私たちは思っています。

 予想以上に混雑していて、予想以上に楽しい見学でした。

ビーフ・ステーキ
(サーロイン)


りんごのアイスと
アイスコーヒー

国立西洋美術館前にて

 昼食後、常設展も見て行こうと常設展の入口に入ると、「ル・コルビュジエと20世紀美術」展が常設展の展示室で開催されていました。びっくり。

 私はル・コルビュジエさんは、国立西洋美術館の設計をした建築家だと認識していましたが、彫刻、絵画を描かれるアーティストな面も持った方だったようです。

 ル・コルビュジエさんの作品と、ル・コルビュジエと交流があった方の作品が展示されていました。
 いつもの常設展の約半分のスペースで「ル・コルビュジエと20世紀美術」展が開催されていて、残りの約半分のスペースで常設展の作品のうちの半数くらい?が展示されていました。モネの作品が1点も展示されていませんでしたし、これは…ポーラ美術館と共催のモネ展で、この時期、国立西洋美術館所蔵のモネの作品がポーラ美術館へ貸し出されているからだったりして…。

 いつもどおり、特別展の半券で「ル・コルビュジエと20世紀美術」も見られましたから、これはこれでよかったですが…。

国立西洋美術館チケット売り場前