あたし知ってる。
　あんたはあたしを見てるの。ずっとずっと。
　いい加減視線がちくちくちくちく痛いもの、いくら一流の剣士がやったって気がつくっての。いや、一流の剣士だからこそ？　円形脱毛症とかなったら金髪のカツラ作るからそこんとこよろしく。
　何も知らないなんて、甘ったれたこと言わせないわ。
　あたしは待たない。ついて来れたら褒めてあげるから頑張りなさいな。
　まだまだよ。あんたは覚悟が足りないわ。あたしがさっぱり分からないくらい、掴めないくらい困惑させて見せなさい。あたしが理解できないうちは、そんなの絶対に無理だもの。あたしを欲する人なんてどこにでもいくらだっているんだから、自惚れないことね。
　手管を尽くしたくらいじゃ全然だめよ。お話にならない。
　それだけ？　それだけ？　それで全部？　本当に？
　大嘘吐き、って詰るのも親切だから言わないであげる。降参してもいいのよ。その時はごめんなさいって謝ってね。姉ちゃん直伝のお仕置フルコースを三回で、許してあげないから。
　あたしにあんたに合わせろって？
　甘ったれんじゃないわ。期待するのも許せないわね。このリナ＝インバース様に向かって、何様のつもりかしらね。言われてやっと理解するなんて、三流なことはやめてね。あんたを全部使って、試してみなさいよ。逃げも隠れもしないわよ。手からすり抜けるなんて、そんな馬鹿なこと言い出したら承知しないわ。
　あんたができるようになるまで、あたしはずっと前を向いているから。あんたがくるまってるあんたの安穏とした分厚い毛布に興味はないの。男でしょう、思い切ってみなさいよ。あたしの相棒でしょう、何をちんたらしてるのよ。
　例えば、夜もずっと傍にいたいとか？
　だめよ。そんな目で物欲しそうに見てるだけじゃだめ。何をしなくちゃいけないか、もういい大人なんだから分かってるでしょう？
　そんな目じゃだめ。まだだめ。
　振り返ってやらなきゃいけないなんてまだまだだめ。
　そうやって馬鹿みたいに口を開けて待っているがいいわ。今に後悔して慌てて喚いて、ぶちまけた本音を叫ぶに決まっているんだもの。
　決まっているわ。
　だからガウリイ、今度はあたしを見抜いてみてよ。