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高機動戦隊ガンパレンジャー


 地球は狙われている。

 突如現れた黒き月。皇帝ナッチャン率いる悪の幻獣軍団により、人類は滅亡の危機に瀕していた。
 誰もが絶望しかけたその時、神秘の力OVERSによって戦う事を運命づけられた5人の若者が立ちあがった。

 高機動戦隊ガンパレンジャー。これは、正義の為に命を賭ける少年少女たちの、熱き魂の物語である!


『こうきどうせんたいガンパレンジャーのうた』

(前奏)

 せーかいがーくーろーくー 染めーらーれるー
 あーくのげーんじゅうー やーっつけろー

 みーちのちーかーらーにー まーもらーれーたー
 しょーねんたーちーよー 立ーちーあーがれー

 その勇気は、誰のため?
 その友情は、誰のため?
 その愛はー、だーれーのたーめにー

 繋げー 想いをー
 果てないー 未来へー

 その命はーまだー見ぬー 誰かのたーめにー

 戦えー 希望がー あーるーかーぎーりー
 高機動ー戦隊ー ガンパレンジャー




第32話『インフレを防げ! 怪奇延べ棒男の恐怖』
 
 

 地球の衛星軌道上に浮かぶ、移動要塞『黒き月』 その玉座の間では、車椅子の皇帝ナッチャンが新たなる怪人を産み出そうとしていた。

 暗闇に浮かび上がる黄金の直方体。そこから一対の手足が生えている。前面やや上方に付いている顔は、頼もしい限りの凶悪さだ。

 その名を延べ棒男。あしきゆめの産み出せし邪悪生命体。

 周囲の戦闘員たちが跪く中、延べ棒男だけは文字通り棒立ちになっていた。
 ふてぶてしいその態度には、実は理由がある。
 座れないのだ。しかも、転ぶと一人で立ちあがれない。

 しょうがないから、皇帝も黙認状態。
「ゆけ、延べ棒男よ! 人類に恐怖を撒き散らすのだ!!」
「では私も奮発しましょう」
 延べ棒男は皇帝に対して不適な笑みを浮かべ、颯爽と振り向……こうとしてこけた。戦闘員におこしてもらっている延べ棒男を見ながら、皇帝ナッチャンは誰ともなくつぶやいた。
「……今回も、だめかな?」
 
 

 つかの間の平和を享受する街に、それは突然訪れる。
 幻獣の名の通り、忽然と現れる異形の者達。
「では私も奮発しましょう」
 それしか言えないのか。
 言えないのである。

 街はそれでも、恐怖の叫びに包まれた。
 逃げ惑う人々を嘲笑うかのように、いたるところに現れる幻獣。逃げ場を失い、捕らえられた人間が一人、また一人と延べ棒男の前に連れて行かれ、

 金の延べ棒と紙飛行機を交換させられた。

 無理やりと言うかなんというか。
「では私も奮発しましょう」
「では私も奮発しましょう」
「では私も奮発しましょう」
 あっという間に延べ棒男の周りは黒山の人だかりである。
 所詮は世間知らずな金持ちのボンボン。
「では私も……」
 金の延べ棒が無くなった。
 その途端、潮が引くように去っていく人々。
 金の切れめが縁の切れめ。
 やけに肌寒い風を感じる、幻獣軍一同であった。

「そこまでです!」
 人の世の虚しさを感じて、精神的になんだかすごいダメージを負った幻獣軍に追い討ちをかけるかのように、凛とした声が響きわたる。

 ビルの上に立つ、色とりどりのウォードレスにその身を固めた若者達。

 馬鹿と正義の味方は高いところが好きなのである。

「熊本の平和を守るため!」
 ガンレッド 壬生屋 未央

「……愛と」
 ガンブラック 来須 銀河

「勇気と」
 ガンブルー 芝村 舞

「友情の!」
 ガンイエロー 滝川 陽平

「我ら、高機動戦隊!」
 ガンピンク 速水 厚志

『ガンパレンジャー!!』

 どかーん

 背後で大爆発。

「……あのー」
 ガンピンクこと速水厚志が、手をあげた。
「なんで女の子が2人もいるのに、僕がピンクなのかな?」
「公式ヒロインがなにを言う」
 にべも無し、芝村舞。
「昨日の夜は、あんなにかわいかったのに」
「なッ そそそそれとこれとはか、関係ないであろうッ!」
「不潔ですっ お邪魔しますなんて言う間もないほど不潔ですっ」

 壬生屋が入ってきた。

(お、おのれー)
(お、おのれー)

「そういう事をしていると和が乱れます! 今後注意してください!」
「ほほう」
 真っ赤になってわめき散らす未央をじと目で見る舞。
「壬生屋。そなたが前の日曜に瀬戸口と楽しそうに歩いているの見たのだが、あれはデェトではないのか?」
「うっ そ、それは」
 思わぬ事態にうろたえる男が一人。ガンイエロー、滝川陽平である。
「どういう事だよ速水。恋人つくる時は一緒だって言ったのに。なんでみんなしてラブラブ(死語)なんだよ!?」
「終盤になっても味のれんでお昼を食べるような人は黙っていなさい」
「イエローはイエローらしくカレーでも食っていればよかろう」
 悪口コンボ。
「来須さん、なんとか言ってやってくださいよ!」
「そう言えば萌ちゃん元気?」
「……ああ」
 ガンイエローは泣きながら走り去っていった。
 ヒーローの結束、一枚岩にあらず。

「……では私も奮発しましょう」
 すっかり忘れ去られて、延べ棒男はとても寂しそうだった。現実というものを直視させられた後のこの仕打ちは、ある意味強力な攻撃だった。
「あ、まだ居たのか」
 ガンピンク、とどめの一撃。
 延べ棒男はどこかの採石場で大爆発をおこした。

 その頃の皇帝ナッチャン。
「えー? やっぱりやるんかー。タダやないんやで」
「仕方ないだろ。決まり事なんだから」
「なっちゃんがもっと強いの作ったらええねん。まったくもう」
 尻にしかれているもよう。
「あしきゆめ、増大」
 皇帝ナッチャンの声と共に、謎っぽい機械が動き出す。
 
 爆発したはずの延べ棒男が、巨大化して復活した。
 お約束である。

 破壊の限りを尽くす巨大延べ棒男。今度こそ本当に街が恐怖の叫びで包まれた。
「あっ 女の子が下敷きに!」
「良く見ろ厚志、あれは田辺だ。それよりも士魂号を呼ぶぞ」
 言いつつ左手の多目的結晶体を掲げる舞。
 
 現れたのは、通常の数倍はあろうかという巨大な士魂号だ。
 その名も士魂号連座型。原素子博士の野心作であり、中身は大変な事になっているらしいが、あんまり深くつっこむと消されてしまうので誰も何も言えない。
「……イエローが帰ってこない」
「どうせ居ても居なくても一緒だ」
「それもそうですね」
 滝川をいぢめる時だけ仲のいい女の子2人。

 相対する巨大延べ棒男と士魂号連座型。先に動いたのは延べ棒男だった。

 向きを変える(TW)

 続いて士魂号。

 N.E.P.(NEP)
 
 わずか3ステップで勝負がついた。

 夕日に向かいたたずむガンパレンジャーの4人。
 今日の勝利を明日の希望に変えて、戦え! 高機動戦隊ガンパレンジャー。皇帝ナッチャンの野望を打ち砕くその日まで!!

 次回予告

 ガンパレンジャーに新しい戦士が! 新ガンイエロー・若宮康光の力を見よ!
 次回、第33話『その弁当は危険な香り(いやマジで) 刺されても好きな人』
 お楽しみに。

「……なんていうのはどうだろう?」
「たわけ」


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