to catalog
The Secret of Boogiepop
合流

 混乱に紛れて当初の目的を果たした健太郎命名『キリタンポ』のコクピットは、すごいことになっていた。
 定員3名のところ、その倍の人数が押し込まれている。しかも、内2名はきらびやかなドレスを身に纏っていた。さらに1名は気絶している。
 その上、どこをどう間違ったのか、啓司が操縦を担当していた。
「こ、これどうやって動かすんだよ?」
「あ?原チャリの免許ぐらい持ってるだろ?似たようなモンだよ」
 原チャリの20倍位ある計器類に啓司はパニック寸前だった。
「君、名前なんていうの?あ、俺は谷口正樹」
「あ、あの織機綺って言います。でも今は……」
「こ、こうかな?」
 啓司が試しにボタンを押してみると、何やら機械の作動音が聞こえて、モニターに閃光が走った。
 前面に見えていた壁が爆発四散する。
「おー、うまいうまい」
「先輩すっごーい」
「じ、実弾!?」
「大丈夫?怪我とかしなかった?」 
「宮下さん?が庇ってくれたから……あの、今はそれどころじゃ」
 壁を突き抜けて、空中に出る。
「右の赤いボタンだ」
「こ、これ?」
 おそるおそる啓司がボタンを押すと、急に落下スピードが落ちた。機体の状態を示すモニターは、キリタンポが飛行モードとなり、2本のプロペラを露出させた事を表示している。
「す、すごい……」
「そのままスロットルで出力を調整して、海面に着水だ」
「この島の娘?一人で帰れる?よかったら……」
「あの、私記憶が……あっ」
「ていうか、てめぇが操縦しろ正樹」
「あーっ、羽原さんに続いて谷口君までっ」
 気絶者が2名になった。

 戦艦パンドラもまた、混乱に乗じてこの島から脱出を計っていた。
「寺月恭一郎を逃がしたのは痛かったね」
「ああ。奴がこの程度でくたばるとは思えないからな。……統和機構の無線傍受は?」
「ありません」
「たかが前線基地の一つや二つ、失ったところで痛くも痒くもない、か」
「船長、前方に未確認物体発見。……なんだありゃ?」
 香純の声に慎平もモニターを見る。
 たしかになんだかわからない。
「統和機構のものじゃないみたいだけど……」
「救難信号発信してるぞ、あれ」
「あ、あの、助けた方がいいんじゃないかな?」
 何故かおどおどした優の言葉にうなずくと、慎平はピジョンに未確認物体の回収を命じた。
 こうして啓司と藤花は再びパンドラに乗り込むこととなった。


end