奇稲田アスタ作品集

第11回


釈然としないまま日数が経過してしまい、気付けば初めての日曜日を迎えていた。

朝からブルーの入っていた俺は、管理局員から貰った地図と

『サルでも分かるドルファン攻略マップ』という怪しげなガイドブックを手に取り、街へと散策に出掛けた。

取り敢えず、『ドルファン国立公園』という所にでも行って、ボーッとソフィアの事を考えよう。

嗚呼、空は雲一つない程澄み渡っているのに、俺の心の中には暗雲が立ち込める。

そんな思いに支配されながらフラフラ歩いていると、目の前にドルファン公園が飛び込んで来た。

しかし次の瞬間、俺の中の暗雲は一気に消え去った。ソフィアだ!

ガイドブックに載っている『トレンツの泉』という所に一人で向かっている。

こうなったら、この前の爬虫類について聞いてみよう!

例えその答えが認めたくない事実でも、このままよりはマシだ!

俺は、意を決してソフィアの元に歩み寄った。

「やっ、やあソフィア。偶然だね。」

ワザとらしい…

後ろめたさは全然無いのに、妙にぎこちなくなってしまう。

「あら?アスタさん。どうしたんですか、こんな所で?」微笑みを浮かべながら聞いてくる。

「あっ、あの、その…」

「ちょぉぉぉっと待ちたまえ!」言葉に詰まる俺の背後から、記憶に新しい嫌な声が響いてきた。

まさか…

「ジョアン・エリィィィタス、華麗ぃに見参んんんっ!」そう言って、そそくさとソフィアの側に歩み寄る。

「ジョアン!?」

ソフィアは驚いた様な表情になり、俺は心の底から呆れ返った顔をする。

成る程、こいつの名前はジョアンと言うのか。それにしても随分とタイミングよく出てきたな。

まだ、一言二言位しか話してないのに……。

こいつ、ソフィアのストーカーなんじゃないのか?

それに、この薔薇の花びらは一体どこから何処から出したんだ?

だが、俺の事などお構いなしに、ジョアンは一方的にソフィアを問い詰めていた。ソフィアの表情が段々と曇っていく。

すると、急に俺の方に向き直る。

「そこの東洋人!」人差し指を立てて俺に突き付ける。

「知らないのなら教えてやろう!ボクは、この国屈指の財閥『エリータス家』の三男だ!

 その婚約者と一緒に出歩こうとは、広井王子が許してもこのボクが許さんっ!」

婚約者ぁ!そんな馬鹿な!こんな男の何処が…。

真意を探ろうとソフィアの顔を見ると、表情をさらに暗くした。

と、言う事は……

「大体、貴様は彼女のなんなんだ!」俺の考えを遮るように口を挟んできた。

血眼になって俺の事を睨み付ける。今にも、先が二つに割れた細長い舌を出してきそうな勢いだ。

「俺は……俺は彼女の恋人候補だっ!」

風雲急を告げるSS。アスタの運命は如何に?
 

続く……

 

次回予告

とうとう次回で最終回や!

うちらも黒の巣会に負けんよう頑張ろうな、大神はん!

次回「ザクロ大戦『真剣白羽鳥はムリがある!』」

ようやく終わるでぇ、大神はん。


次へ行く

 

前へ戻る

 

作品集のリストへ戻る

 

SSのリストへ戻る