第3話「英雄の帰還」


目の前にドルファンの大地が近づいてくる。

あの波止場で彼女と出会ったのが、すべての始まりだ。

懐かしのドルファン。我が心のふるさと……。

 

港に降り立った私を待っていたのは、盛大な歓迎だった。

花火が打ち上げられ、音楽隊のパレード。

そして、港を埋め尽くした人々が、私に向かって拍手喝采……。

あまりの驚きにその場に立ちつくしていると、ふいに後ろから叩かれた。

「な〜に、ぼーっと突っ立ってるのよ。さぁ行くわよ」

「プ、プリシラ王女?!」

状況がよく飲み込めないまま、プリシラ王女に手を引かれ、馬車に乗せられた。

 

馬車にゆられる中、状況の説明を求めても、彼女はただ

「それはこれからのお楽しみってことで、いいじゃない?」

と微笑みかけるだけだった。

 

馬車が止まると、そこはシアターの前。私の思い出が詰まった場所だ。

「時間は…、うんピッタリだわ。もうすぐ開演ね。さぁ行きなさい。私から…いえドルファンからあなたへ、プレゼントよ」

 

劇の題目は「聖騎士と少女」。

外国人傭兵が、国の平和を守り、一人の少女を不幸な運命から救う物語。

その傭兵は聖騎士まで上り詰めるも、法によって国を追われることになり、少女との再会を誓い別れる。

ソフィアとの思い出が走馬灯のように甦る。思わず涙があふれた。

だが、彼女の登場はないまま、舞台は幕を閉じた。

やはり、彼女の夢は叶わなかったのか……。

無念の思いを抱きつつ、席を立とうするも、周りの観衆は誰一人として動こうとしない。

そのとき、ウェデングドレスに身を包んだ少女がゆっくりと舞台の中央へ足を進め始めた。

歓声がひときわ大きくなった。

スポットライトに映し出されたその姿は……。

 

ソフィア!!

 

「突然ですが、この劇は本日、最終回を迎えることになりました。ここから先はもう物語ではありません。みなさんの目の前で起こることすべてが現実です。客席のどこかで、私を見つめているあなたのために…。いえ、あなただけのために歌います。二人だけの明日を……」

彼女の歌には私への想いがあふれていた。

急な別れから伝えることのできなかった想いが……。

私の姿に気づいた彼女は顔を輝かせ、その歌声は一段と美しさを増した。

歌が終わると同時に、舞台の幕がもう一度開かれ、そこには教会のセットが現れた。

すべてを理解した私は席を立ち、鳴り止まぬ拍手の中、ゆっくりと舞台へ足を運んだ。

舞台に上がると観客に一礼し、彼女の元に歩み寄り、思い切り抱きしめた。

彼女は私の胸の中で大粒の涙をボロボロとこぼしながら、

「嬉しい。もう会えないかと思ったこともあった。でも、あなたのことを想い、一心に歌いつづけました。もう一度あなたに会えることを夢見て……」

「そして君の歌が、もう一度私をこの国へ導いてくれた」

奪われた時を取り戻そうとするかのように、私たちは無言のまま抱きあった。

観衆の拍手は止み、シアターに静寂が舞い降りた。

その場に居合わせた人々は、一大抒情詩の完結を見届けようと、静まり返っていた。

「さぁ、そろそろ物語の続きを。みんなが待っている」

「そうですね。行きましょう、私たちの未来へ」

私たちは手と手を取り合って、舞台の奥で待つ、神父のもとへ向かった……

 

END


後書き

 

まずは最後まで読んでくれた、画面の前のあなたに感謝します。

頭に映像は浮かべど、文字にするのは難しい。

下手な文章で申し訳ありません。

 

ある読書家の友人に、中世の騎士の戦いと恋愛の物語を描いた本ってない?

ドン・キホーテみたいに社会風刺じゃなくて、純粋な物語が読みたいんだ。

と持ちかけたところ、このゲームを渡されました。

 

恋愛ゲーム? バカにされているのか。

と思いつつもゲームを始めてみると、その物語の奥深さに、しだいに惹かれるようになっていました。

ソフィアでエンディングをむかえて、これじゃ彼女の夢はどうなるの?

観衆の前で歌うという夢を叶えてあげたいな。

と思ってこのSSを書いてみました。

いかがでしたでしょうか?


第2話へ戻る

 

目次へ戻る