第2話「星空の夜に」


(久々に街に来たな…)

以前来たのはいつだっただろうかと考えながら、目的の酒場へと向かう。

時刻は6時を過ぎた頃だ。もう酒を飲むには十分な時間だ。

キィ…

少し錆付いているようだ。

(こういう所に気をつければ良い店なんだがな…)

と思いながら酒場の扉を開け、目的の人物がいるか、ざっと店内を見渡す。

目的の人物はすぐに見つかった。

「レズミー」

カウンターに座って飲んでいる20過ぎの女に声をかける。

「あら?“隻腕の剣将”のシリュウ様じゃない」

もうかなりの量のお酒を飲んでいるようだ。すでにろれつが回らなくなっている。

「今は義手を付けている。それより、飲み過ぎではないのか?」

マスターにブランデーを頼みながら言った。

「私の事は放っておいてよ」

と言いながら、グラスの中のワインを一気にあおる。

「そうだな。本題に入ってもいいか?」

グラスの中身を一口あおる。琥珀色の液体がのどを焼く。

「へぇ〜。ここ数ヶ月、まるで外の事に興味を示さなかったのに。一体何の情報が欲しいの?」

多少驚いたようだが、すぐに商売をはじめる。

さすがプロだ。少しでも交渉を上手く運ぼうという姿勢がみえた。

「ドルファンだ」

「ふ〜ん…。いいわよ」

レズミーは簡単に引き受けた。

「そうか。報酬はどうする?可能な限りお前の頼みを聞こう」

グラスに残ったブランデーを飲み干して言った。

「そうね。私と結婚して。前から言ってるでしょ?」

そう。これは、彼女と知り合った頃からの口癖だった。

「冗談はよせ」

これもいつもの答え方だ。

「私は本気よ。大体、奥さんが病気で死んでからもう半年よ?そろそろ…」

立ち上がり、銀貨を数枚カウンターに置く。

「いつもの額を用意しておく」

出口に向かいながら言う。

「分かったわ…。一週間ちょうだい」

何も言わず外に出る。了解の合図だと分かったはずだ。

これから街は騒がしくなる。それから逃げるようにシリュウは街の門を出た。そして星空を見上げながら呟く。

「キャロル…」

亡き妻の名を呼ぶ。

(俺は、俺たちが出会った国を敵にまわそうとしているよ…)

俺はかぶりを振り歩き出した。

 

続く


作者の独り言

 

とりあえず第二話です。沢山の人に読んで頂ければ幸いです。

さてここで、「何で既にヒロイン(もちろんキャロルの事です)か死んでいるんだ?」と、疑問に思った方もいるかと思います。

ですが、こうしないと最終話に繋がらないんですよ。(キャロルファンの方々すみません)

こちらの第三話は「本陣へ」というベタな題名で予定しています。お楽しみに。

まぁ次はSSの執筆をしようかと思っています。そちらの方も良かったら見て下さい。

メールアドレスを最終話の独り言に載せようかと思っています。

その時は感想をお願いします。


第1話へ戻る

 

作品一覧へ戻る