ライバル

〜その1〜「ジョアン」

著:おタクろ〜


―決闘―

体中の痛みをこらえて敵をにらみつける。

 

「おぉぉぉっ!!!」

振り上げた剣を相手に向かって思い切り振り下ろす

ヒュン!…が手応えが無い。

 

ドゥ!…脇腹に激痛が走る。

「………!…やられた?」

「ブザマだな…東洋人!」

ジョアンの声が聞こえる…と同時に剣が跳ね上げられる。

ドカッ!…アゴにトドメの一撃…意識が薄れていく…

 

―勝てると思ったんだ…―

 

この前の日曜日…いつものように一番安いカンヅメと食パンを買いお店を出る。

「相変わらず貧しい食生活ぅ…」

俺にだけ見ることのできる妖精…相棒のピコがブツブツ言っている。

「しょうがないだろ〜」

「手料理を作ってくれる彼女とかいないの?」

「…おまえもいちおー“女の子”だよな…目玉焼きの一つぐらい…」

「私がフライパンを持てないの知ってるクセに」

 

「はぁ…ピコが妖精じゃなくてフツーの女の子なら…」

「それなら私ももーっと格好いい男を見つけて幸せになるのにぃ〜」

 

「だいたい乙女心を全っ然!理解してないんだよねーキミは」

「はいはい…」ココはてきとーに聞き流しとこう。

「あっ…ねぇねぇ」

「んー?」

「むこうにもいるよ、乙女心を誤解してるヤツが」

 

ピコの指さす方向を見ると一組のカップルがいた。

「あの後ろ姿は…ジョアン?」

嫌がる女の子の肩を抱き寄せ、鼻の下を伸ばしたまま…ホホをすり寄せている。

「あの子…たしかソフィアって名前だよね」

 

「イヤ…やめてください」

家庭の事情ではっきりと断ることの出来ない彼女は、

今にも消え入りそうな声でささやかな抵抗をしている…

…ジョアンの唇がソフィアの口元へ…

「イヤッ!」彼女が少し大きめの声を上げたその瞬間

 

ドカッ!

俺のケリがジョアンの顔面に直撃していた。

ソフィアは…たぶん、俺自信も何が起きたのか理解していなかったかもしれない

 

ドボーン!

「あらら…ずぶぬれ♪」

 

「あの…ありがとう、ございます…」

目を丸くしたままお礼を言うソフィア

「あ…その…」

「いっしょに逃げよう…愛してるよ!ソフィア〜」

 

(ソフィアに聞こえないからって…うるさいぞピコ!)

「に…逃げてください!」

「え?」

「ホラほら!ソフィアもそのつもりだよ♪」…まさか?

 

「彼は…あれでも騎士なんです!だから…」

「あ…たしかに逃げた方がいいわね」

 

ザバァ!!

「ぶはっ…何だ?何がおこった?」ジョアン復活…

幸い彼も何が起きたのか理解していない、俺はジョアンに手を貸して運河から助け出す。

 

「大丈夫ですか?…たしかジョアン―ジョアン・エリータスさんでしたよね?」

「貴様!東洋人!?」

「さすが騎士!さすがはエリータス家の方だ…尊敬しちゃうなぁ」

「何だ?いきなり?」

「女の子相手にデレデレと…足を踏み外したかと思えば運河へダイビング!

 エリータス家の人間で、その上騎士の称号を持っていても…一皮むけばタダのスケベ野郎かぁ」

「!」

「親近感わいちゃいましたよ…」

「貴様ぁ!」

―切られる!―…と、思ったが…彼は剣を持っていなかった、運河にでも落としたのだろう。

 

「ジョアンさん許してあげてください」ソフィアだ。

「彼は東洋の…外国の方です。たかが傭兵に騎士の…エリータス家の本当のすばらしさは理解できないんです」

 

「ナイスフォロー!…でもチョット言い過ぎ」

ピコの言う通りだ…だけど…

“たかが傭兵”には違いない、ソフィアが助けてくれなければ殺されていただろう…

 

「フン…そーだな、東洋の黄色いサルに物事の本質はわかるまい、僕も大人げなかったよ」

―くやしい―

だけど言い返すことは出来ない。

「この無知なサルには、僕がエリ−タス家の人間を代表して再教育してあげよう」

「ジョアン?」

「一対一の決闘方式…模擬戦ぐらいはやったことがあるだろう?」

「やめてっ!ジョアン!」

「一方的に殴られるのもかわいそうだ…“勝て”とは言わない、一撃でも当てられたら…

 そうだ!金貨5枚くれてやる…どうだ?」

 

「やめといたほうがいーよ…」

ピコが俺の顔を心配そうにのぞき込む…

「そーだな…金貨なんていらない」

「なに?」

「その女の子とデートさせてくれるんなら俺はやってもいいぜ…」

「!…ダメです…そんなっ!」

 

「…なっナルホド…いいだろうっ!」

苦笑いを浮かべながらジョアンは条件を飲んだ…

 

「良く言ったよっ!キミもいつの間にか“男”になってたんだねぇ」

喜ぶピコ…ソフィアは困惑している。

 

「キミってそんなにソフィアが好きだったんだ?」

「ちがうよ…」

「またまたぁ」

 

―─アイツは俺達のことを…傭兵を笑った、戦争屋だからホメられた職業じゃないけど…

  大尉を…ヤング・マジョラム大尉の死をバカにした…

  そして、今度は抵抗できない女の子を…だから…

 

それに、実戦では後方で指示をしているだけ、エリータス家の名前と騎士の称号…

そんな物に甘えてるようなヤツに負ける気はしなかった。

 

―ケガをしないように“刃”をつぶした剣をつかっての決闘―

 

…せめて木刀か竹刀なら…

薄れゆく意識の中…顔を両手で隠しながら何かをつぶやくソフィアが見えた…

 

「もう…やめてください…」

つづく……


「その2」へ行く

 

「ライバル」作品リストへ戻る

 

SSリストへ戻る