Lastwaltz


一人の青年が共同墓地に続く道を歩いている。漆黒の鎧を身に纏いゆっくりと本当にゆっくりと歩いていく。

この国、ドルファンの傭兵として3年の月日を過ごしヴァルファ八騎将を倒し、数々の戦争を生き残り、敵を切り倒し続けこの場に立っているのだ。

彼の名は、コウイチ・カシワギ。『神の刃』の通称で呼ばれるドルファンの英雄。そして同時に人々に最も恐れられる存在。

ドルファンでの初陣でヴァルファ八騎将の一人疾風のネクセラリアと戦い、彼にとって数少ない理解者ヤング・マジョラム大尉を討たれ
ネクセラリアを倒したことにより彼は人々から様々な目で見られ続けた。

コウイチはそんな人々の目から避ける様に一人で居ることが多かった。

そんな彼の行動は様々な噂を呼び、ドルファンの城下を賑わした。

それによりコウイチはより一層ドルファンで孤立していく中、コウイチにとって運命を変える出会いが二度あった。その出会いで彼は二人の少女と出会った。

ライズ・ハイマーとプリシラ・ドルファン。

運命のいたずらの様な確率でコウイチと二人の少女は出会い、その二人の少女との出会いはコウイチにとって何事にも変えられない大切な物になった。

二人の少女はコウイチを孤独感から救いだし、少女達にとってコウイチは大きな存在となっていた。又コウイチにとっても大切な存在となっていた。

二人の少女はプリシラの誕生パーティで初めて出会い、一方の少女は完全な初対面であり、もう一方の少女は相手のことを知り尽くしていた。

その中で一方の少女は一方の少女の暗殺を企てていた。

そんな事を知らない、否、知りえないコウイチは、少女により毒の入れられた赤ピュエリのグラスを手にとってしまい、ライズによってグラスを落とされなかったら死んでいたかも知れない。

その時は何も彼は知らなかった。後に知る事になる真実。彼はその時運命を恨んだ。恨んでも恨み切れないほどに。

 

そしてその時が来た。コウイチが全てを知るその時が……。

ヴァルファバリアンとの戦争も軍団長デュノス・ヴォルフガリオの自決により終わった。

………ライズ・ハイマーの父、デュノス・ヴォルフガリオの死によって。

そしてデュノスを死に追いやったのはコウイチだった。

 

 

デュノスの死から数日が過ぎたある日、彼の元に一通の手紙が届いた。とても短いたった2行ほどの手紙が。

 

『ヴァルファの無念を晴らす為、共同墓地にて貴殿を待つ』

                   隠密のサリシュアン

 

八騎将最後の一人隠密のサリシュアンからの手紙だった。

彼はその最後の一人に思い当たる節があった。そしてその相手が頭に浮かび出る度に苦悩し、己の運命を呪った………

コウイチは一瞬だけ本当に、本当に疲れきった表情を浮かべ、剣を持ち、鎧を身に纏い。最後の戦場へと歩を進めた。

共同墓地に向かう途中コウスケは誰かに呼ばれた気がした。しかし彼はその存在を否定した。その人物に会ってしまうと彼女を恨んでしまいそうだから

ドルファン第一王女プリシラ・ドルファンを………

彼が共同墓地に着いた時彼女は其処に居た一番立っていて欲しくなかった人物が其処に居た。

彼女は言った。『私がヴァルファ八騎将最後の一人、隠密のサリシュアン』だと。

その言葉を聞いた時、コウスケは全てを否定したかった。

彼女に、ライズに嘘だと言って欲しかった。しかしそれは叶わぬ願いでしかなかったのだ。それは自分が一番理解している筈だった。

コウイチにとって永く永遠とも思える時間、その時間は彼女の口から出た言葉で終りを告げる。

「そろそろ始めましょう、コウイチ」

そう言って彼女は剣を抜いた。コウイチは少し躊躇した後ゆっくりと剣を抜いた。

コウイチが剣を抜いたと同時にライズは走った。剣を真っ直ぐにコウイチに向け一直線に彼に向かって。

コウイチは彼女が目前まで来た時、剣を捨てた。そしてライズの突きを体に受けていた。

何故そうしたのかは解らなかった。自然に体が動いていた。

そしてそのままライズを抱きしめていた。力強く痛いほどに。

ライズは何が起きたのか理解できていない様だった。コウイチの胸に深々と刺さった剣から流れ落ちる血を見るまでは。

彼女は泣いていた。コウイチの胸の中で、八騎将では無く一人の少女として。

コウイチはもっと永くライズを抱いていたかった。けれど体から力が抜けそのまま倒れ落ちてしまった。

倒れるその瞬間コウイチは空を見た。雲一つ無い青一面の空を。

コウイチの体はもう動かなかった。それでも顔を無理矢理動かし、自分の傷口を抑え続けるライズへ一言だけ告げたいことがあったから………。

只一言「済まなかった」と。

その後出来るだけ笑ったつもりだった。

最後にライズの顔を目に刻みこんでから静かに目を閉じた。

 

 

そして一つの物語は終りを告げ、新たな物語りがどこかで始まり告げるのだろう。

そして永い、永い時を経て、二人は又出会うのだろう。

どんな形で出会うかは解らない。けれど二人はお互いに引き合い、必ず再会を果たすのだろう。

ドルファン学園の前で偶然に出会った様に……………


後書きと言う名の言い訳

 

何とか終わりました。

悲しみのワルツの傭兵側から視点から見た作品なわけなんですが、暗い、暗すぎる!

しかも全然喋らない上にピコは何処へ!?

何とか次に書く時は(書ければ)もっと明るい皆が喋ってピコのでるものを書き上げたいと思っています。

それではこんな作品を最後まで読んで下さった方に最大限の感謝を。

お叱りのメールなどありましたらgreatwatanabe@nifty.ne.jp迄お願いします。


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