傭兵生活の一日

〜その3〜

著:ナイト君


俺は刀剣屋の中にいた。先日購入した刀の銘が知りたくなったのだ。

「主!この刀の銘を教えてくれないか?」

俺はその刀を見せながら言った

「メイ?ああ刀の名前のことか…。日本刀って言うらしいぜ」

「そうではなくて、日本刀の中でもまた細かくそれぞれに名前がつけられているのだ」

この刀身の素晴らしさ…。とても無銘とは思えない。

「そういえば聞いた事があるなぁ!なんか変な名前だった」

変な名前…だと?

一体どんな名前が付いているというのだ?

「う〜ん、なんだったかなぁ、思い出せん」

(これは駄目だな)そう思い俺は店から退出した。

そしてしばらく俺は街を歩きながら考える。

(この刀は本当に凄いのか?俺の目が節穴なだけではないのか?)

「おい!!お前」不意に声が聞こえた。

声の主─赤髪。髪が立っていて鼻が長い。前に一度会った事がある。

 

〜以前〜

からまれてた女の子(ソフィア)を助ける為にボコボコにした奴だ。

「なんだ、前の仕返しか?」

「あぁ、それもある。しかしそれ以上に声をかけた理由は、お前を倒せば俺の名が上がるんだよぉ。決闘だぁ!!」

「決闘だと!意味を分かって言っているのか?」

決闘など、一般人が…それも命を懸けることすら出来ないチンピラ等が、気軽に言って良い言葉ではない!!

「あぁ、ようするに…お前を殺すという事だよぉーー!」

この言葉を言うや否や、何か鉄のようなものを投げつけてきた。

「ふ、俺に不意打ちを仕掛けるのならその薄汚い殺気を消してから攻撃してこい!!」

こういう輩は大抵同じような事をする…。おまけに使う武器にも慣れていないのか、避けるのも容易である。

(とはいえ、あの得物は厄介だ)

2つの長細い鉄の塊の先に縄をつけたものだ。トンファーに似ているが少し違う。これは間合いが取りづらい。

この武器を相手に奴を抑えるのは少々酷な事なのだ…。

(アレをするか?しかし出来るのか?実戦で今の俺に…)

そうこう考える内に2撃目がきた。

しかしこの手の武器は、常に一直線上に飛来するので避けやすいのだ。これを紙一重で避ける。

「へぇ、アレをかわしたか…さすがだねぇ!」

「ふーん…あんまりトロいんであくびがでそうになったんだがなぁ」

軽い挑発である。挑発は相手を選ぶんだが、どうやらこいつには心配なさそうだ。

「なんだとぉぉ!てめえ、ちょっと誉めたら図にのりやがって。この攻撃のどこが遅いっていうんだ!

奴は怒りに任せて3撃目を繰り出してきた。それをすかさずかわし俺は一気に奴の懐に入った。

この武器、投げた後は隙だらけなのである。

「なにぃぃ、しかしそんな細い剣で何が出来る!!」

(何が出来るだと?お前はこの刀の恐ろしさを知らない…)

やや、型が居合いになる。

(刃先を立てて居合いの勢いを殺さぬままに…斬る!!)

シュッ、ドス!!

その瞬間重い物が地面に落ちた音がした。そう…俺が狙ったのは奴の急所ではなく、奴の得物の方なのだ。

「こ、こいつ!鉄を斬りやがった…」

これでこいつは俺を襲おうとは思わなくなるはずだ。

縄を斬ってもよかった…。しかしそれでは奴の事だ、逆上して俺を襲ってくるだろうな。そうなれば奴を斬るしかなくなる。

「ば、化け物だ!うわぁぁーーー!!」

そう言い残し奴は去っていった。

(化け物か…)

確かにこの地では一流とされているが…。俺の国では二流の上といった所…なのだがな。

あんな奴、俺の国で達人とされている者が相手だったら、最初の一撃目で肩から上がなくなっていた。

俺が無実の罪で島流しになるちょっと前に達人同士の決闘を見たことがあるが、

どう卑下して見ても今の俺では立ち入る隙がないだろう。

それにしてもなんだこの刀は…?

恐ろしい程の切れ味である。まさか真っ二つになるとは思わなかった。

確かに俺は「斬鉄」の真似事は出来る。しかし実戦となるとどうだろうか…。

(一種の賭けだったんだが…)

しかも、鉄を斬っていて刃こぼれ1つない。

(これは俺の手に置いとくにはもったいないのかもしれない。しかし…。

 そうだ!俺がこの刀に銘を付けよう、自分への言い訳の為に…)

結局、銘は─時雨─にした。

でも、これから俺はどうする?この戦争が終われば俺はこの国に捨てられるだろう…。

その時また俺は他の国で傭兵をするのか?

「あ!ナイトさん」

「やあ、アンじゃないか」

それとも命を賭けてでも故郷に帰るか?

「どうしたんですか?珍しく難しい顔して…」

「え!!珍しくは余計だよ」

………やめた。

「ご、ごめんなさい」

「いや、別に謝らなくても良いよ」

先を見据えるのも良いが……

「ところでアン!海に行かない♪」

「は、はい!!」

今は現在(いま)を生きよう。それが今の俺には一番だ!!


おまけ

 

「あ、あのー」

「そ、そうだね。今の季節に海はきつかったね!さ、寒いぞ」

─現在、2年目の12月─

 

ちなみに、ちょうどその頃、刀剣屋にて…

「あ、思い出した。その剣の名は菊一文字なんとか…ってアレ?」



<後書き>

 

うわーー!心配だぁ!

自分の文って脱字多すぎだからなぁ(しかも初のシリアス)

その1なんて見れたもんじゃないし…(ーー;)

ところでこの主人公キャラ、変わってるけど普段の話し方はこうなんです。

ただ女7人(ピコ含む)が近くにいると変わります(^^;)

あと島流しって所は、当時日本は勝手に異国に行ってはならないという法律があるんです。

(余程の事があるなら別ですが)

だから、異国にいる事に一番無理がないかな?という事で島流しにしました

刀は菊一文字、これは傭兵の給金6ヶ月分では絶対に買えません。(ヘタしたら一生分でも無理かも…)

だから運が良いですね。この主人公(爆)。

あと、最後に何故か2年目にアンがいますが気にしないで下さい。


「傭兵生活の一日」作品一覧へ戻る

 

SSリストへ戻る