ヒョウモンガメの繁殖


近年、国内の動物園ではブリ−デイングローンによる繁殖が盛んになってきました。しかし爬虫類の事例はほとんどありません。こども動物自然公園におけるヒョウモンガメの繁殖の一例を紹介します。
1988年5月28日より、ヒョウモンガメの飼育を開始しました。90年より交尾及び産卵が記録されていますが、産卵場所がなかったため、ほとんどの卵が割れていました。運良く、採れた卵により人工孵化を試みましたが、すべて無精卵でした。オスがメスに比べて、かなり小さかったため、交尾が不完全であったと考えました。そこで広島市安佐動物公園より、1992年5月3日にオス1頭をブリ−デイングローンにより借用しました。また、動物舎、放飼場を整備し、夏期は常時、動物舎から放飼場に自由に出入りできるようにし、産卵がおこないやすいようにしました。
92年6月より、新しいオスを同居させたところ、さかんに交尾するようになりました。初めての産卵は8月30日の夕刻より始まり、約2時間かけて後肢で穴を掘りました。穴を掘りやすくするためか、穴の中に2−3回排尿し、土を湿らせました。1卵生むごとに確認するかのように、後肢を穴の中に入れていました。産卵は20分ほどで終わりましたが、さらに土を埋め、踏み固め終わるまでには、開始から3時間を要しました。その後、10月25日まで、他の個体も含め、4回の産卵がありました。一回の産卵数は9−20個でした。
卵はすべて採卵し、人工孵化としました。人工孵化には、2種類の方法を用いました。
方法@は素焼きの鉢に園芸用のバーミキユライトを入れて湿らせたものに卵を半分埋めました。、水槽にレンガを入れ鉢をのせ、底には水を入れ、水温を上げることで保温しました。この方法は、湿度が高すぎて失敗でした。ミズガメの方法をリクガメに行ってしまったわけです。
方法Aは発泡スチロールの箱にピートモスとバーミキュライトを敷き卵全体を埋め、上から保温ライト暖めました。地中の温度が摂氏25−30度としました。朝には霧吹きを行いました。この方法を続けたうちの1卵が2月24日に孵化しました。孵化時の体重は22.2gで、孵化日数は122日でした。
孵化した幼体は人工芝を敷いた水槽に収容しました。水槽の中には、パネルヒーターと幼体が身を隠せるようにシェルターを2ヶ所設けました。神経質に見えたため水槽の前面を新聞紙で覆いました。上部からヒヨコ電球をあて摂氏25−30度に保ちました。
1日齢より給餌を始めました。クローバー、コマツナ、蒸し芋、リンゴ、バナナ、茹でニンジンを細かく切ったものに加え、ドッグフードの粉末、添加物としてネクトンREP、BPDS(カルシウム剤)を与えました。88日齢よりクローバーに代え、冷凍ソラマメを与えました。クローバー、コマツナ、蒸し芋、ソラマメの嗜好性が高かったようです。120日齢よりサル用ペレットをふやかしたものを加えました。

 
孵化直後
親指大の卵黄が残っていた。
 

 
11日齢
卵黄が完全に吸収された。

幼体は、孵化時には卵黄の部分が未吸収で体外に突出していました。11日齢には完全に吸収され、23日齢には跡が完全にわからなくなりました。卵嘴は28日齢ごろより目立たなくなりました。
100日齢で85gになり順調に生育しました。初めての繁殖だったため、体重の増加がよりどころでした。しかし、飼料に含まれる蛋白質の含有量が高すぎたため、体重の増加が著しく、問題点を残してしまいました。甲の変形や後肢を引きずるような歩行などです。97年、98年に10頭の子が、久しぶりに孵化し生育中です。今回は反省点を踏まえ、粗飼料のみで、飼育しています。

ヒョウモンガメの体重表
日齢
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
体重(g)
22.2
23.9
29.8
37.0
44.4
48.2
56.0
61.6
67.8
76.1
85.0
96.8

 
日齢
120
130
140
150
160
170
180
190
200
体重(g)
106.5
122.0
140.3
163.6
182.1
201.1
221.8
239.4
256.6



1993年、第41回全国動物園技術者研究会より