ブラントハムスター(Mesocricetus brandti)について
 

1898年に記載された種ですが、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)の亜種とみなす学者もいます。分布は広く、小アジア、コーカサス、イラク北部、イラン北西部、シリア、パレスチナにすんでいます。
野生のブラントハムスターは乾燥した岩の多いステップにすみ、時には農耕地の近くにも見られますが、森や林や草の茂った地域には住んでいません。明らかに湿度の高く湿った場所は嫌うようです。コーカサスでは標高2800mの場所でも見られます。夜明けや夕暮れに見られこともあるようですが、ほとんど夜行性です。日中は巣穴の中で休み、夜間に採食します。野生の状態でも、比較的、人を恐れないといわれています。
1965年8月に、トルコの首府のアンカラ市から125km東南のMalyaという場所で13頭が捕獲され、アメリカのハーバード大学に送られました。
気温が約5℃に低下すると、冬眠に入り翌年の春になって繁殖が始まりました。それまで動物の冬眠の研究には、リス類、コウモリ類、ヨーロッパハムスター、ハリネズミ類、コウモリ類などが利用されてきました。しかし、これらの動物は実験室内で簡単に繁殖せず、野生から捕獲したものが使われていたのです。ゴールデンハムスターは簡単に繁殖しますが、低温下で冬眠をさせると、多くの個体が死亡してしまいます。その点、ブラントハムスターは簡単に冬眠させることができるし、繁殖させることもできました。
1971年にアンカラ市近郊で29頭が捕獲され、これもアメリカに送られました。この個体群は、1965年の個体群と別に飼育され比較されました。すると染色体の数が異なることがわかりました。亜種の関係なのかもしれません。
ブラントハムスターはゴールデンハムスターに良く似ていますが、体がより大きくなります。成獣21個体の体重は、137−258gで平均163gでした。ゴールデンハムスターの成獣111個体の体重は、97−113gで平均105gでした。また、ブラントハムスターとゴールデンハムスターの間では、雑種ができないようです。
繁殖期はかぎられ11月から3月の間は繁殖しません。5月に繁殖のピークを迎えます。妊娠期間は約14日間で、5頭から14頭の子を生みます。寿命は短く、普通は約2年半で、長いもので4年とされています。