没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった

2010年10月

国立新美術館前にて

 すっかり秋らしくなってきた10月1日。ゴッホ展の初日に国立新美術館を訪れました。

 9時25分に地下鉄駅に到着。国立新美術館への地下鉄からの連絡口のシャッターが開くのは9時30分。シャッターの前には10人以上の方が三々五々佇んでいました。シャッターが開き、ゆっくりとエスカレーターを利用して連絡通路まで上がったりして、ゴッホ展の入場口前の待ち行列に並んだのは9時40分。前には約40人くらいがいたでしょうか。その後もどんどん列が延びていき、開場までの20分間に60人くらいが後に並んでいました。
 10時の開場と同時に入場。

 T.伝統−ファン・ゴッホに対する最初期の影響

 1点目の展示作品は「自画像」。→の「灰色のフェルト帽の自画像」とは別の自画像で、燃えていなくて何となくおとなしい感じです。
 1章は、ゴッホの最初期の油彩画と、ゴッホに影響を与えたとされる画家さんの作品が展示されています。ゴッホはミレーを尊敬していたのですか。


 U.若き芸術家の誕生

 この章の私の全体的な印象を簡単に表現するなら、“色のない時代”。
 ゴッホがこんなに勉強家で努力家だとは寡聞ながら全く知りませんでした。

「灰色のフェルト帽の
自画像」

 油彩画ではない作品が並んでいます。ミレーの「掘る人」とその作品を勉強のため描いたゴッホの「掘る人(ミレーによる)」をはじめ、鉛筆や黒チョークを用いて、素描の練習を重ねている作品が並んでいます。
 アントン・モーヴが初期のゴッホに影響を与えた師匠だとかで、モーヴの作品が展示されていました。

「ゴーギャンの椅子」

 V.色彩理論と人体の研究−ニューネン

 私的この章の展示作品の感想は、“まだ色は暗い”です。

 「女の頭部」はまだゴッホになっていないと感じられ、「シャベルを持つ農婦」、「箒を持つ女」は、いわゆるゴッホとはずいぶんタッチが違うように思われました。


 W.パリのモダニズム

 この章の展示作品は、印象派の影響か明るい色彩に溢れています。
 「セーヌの岸辺」は、印象派の影響が大きいように思われます。解説を展示作品の前にして、作品を見る前に読めるようにしていただきたかったです。
 「マルメロ、レモン、梨、葡萄」は、黄色、黄土色でそれぞれの果物、テーブルなどの黄色の世界が陰影と線描で描かれています。ゴッホが額装まで手がけたもののうち唯一オリジナルが残る作品だそうです。何だかすごく印象に残る作品でした。

 モネの「ポール=ドモワの洞窟」(茨城県近代美術館所蔵)は、初めて見ました。離れて見ると海の色が青から緑に自然に変わっていてうっとりしてしまいました。

 ゴッホの「カフェにて(「ル・タンブラン」のアゴスティーナ・セガトーリ)」とロートレックの「テーブルの若い女(白粉)」が隣りに展示されていて、ロートレックの絵から影響を受けているとの解説を並んでいることから、じっくり見ることができました。
 X.真のモダン・アーティストの誕生−アルル

 いわゆる私が持つゴッホのイメージの作品たちが並んでいます。

 「アルルの寝室」は再現された寝室と作品が同じ展示室に展示され、両方を同時に鑑賞できました。ナイスアイディア。「アルルの寝室」の部屋が歪んでいると思っていたら、もともとの部屋が長方形ではなくて変形した4角形(台形っぽい?)だったのですね。なるほど納得。
 「サント=マリ=ド=ラ=メールの風景」は5mくらい離れると、ラベンダーの花の色がいい感じです。
 「ゴーギャンの椅子」は、これで薄塗りなのかな。「緑の葡萄畑」はものすごい厚塗り。

「アルルの寝室」


「アイリス」

 Y.さらなる探求と様式の展開−サン=レミとオーヴェール

 ゴッホの最晩年の作品たち。この章もゴッホゴッホしています。

 「渓谷の小路」はぐねぐね感がゴッホ。

 「アイリス」の花の色は紫が退色して紺に近い紫になったと解説に書かれています。もともとは紫だったのですかぁ。

 最後の70日間で70作品を描いたゴッホ。どんな想いがゴッホの内にあったのでしょうか。
 油彩画では、離れて見るといい感じの作品、近くで見た方がいい感じの作品、近くで見ても遠くで見てもよく分からない作品といろいろありました。

 ゴッホが画家を志してからこの世を去るまでの10年間の画業の変遷を早送りのように見られました。没後120年を経てもなおゴッホの作品は輝き続けています。

 ゴッホ展の初日の見学でしたので、かなりの混雑を覚悟していました。それが、「アルルの寝室」、「灰色のフェルト帽の肖像画」などの前は黒山の人だかりでカニの横ばい状態でしたが、他の作品の前はそれなりに進んでストレスはさほど感じずにすみました。…というか「アルルの寝室」の前でも、一瞬、人の流れが途切れて、少し離れた位置で再現された部屋と「アルルの寝室」を見比べることができるときがあったほどでした。思っていたよりもずっと快適に見学ができてラッキー♪タイミング的によかったのでしょうか。謎です。

 10時から11時55分まで、1時間55分の充実した時間を過ごせました。

 それにしても、ゴッホといえば必ず想い浮かべる「ひまわり」が展示作品に含まれていないのは何故?今回の主旨に合わなかったのでしょうか。