『罠』観劇記・東京千秋楽
1999.10.24 (日) 渋谷パルコ劇場 14:00〜16:10
家出した妻を心配し、酒を飲みつつギターを弾きつつ夜明かしするコルバン氏から幕があがる。全く手がかりがつかめない警視に対して必要以上に声高に詰め寄り苛立ちを隠そうとしないコルバン氏。
初日に観たときには、何もそんなに大声を張り上げたり苛々しなくてもよさそうにとあまりの落ち着きのないコルバン氏に唖然としたものだが、結末を知っている2度目の観劇では、同じ芝居であるに関わらず全く違う見方ができるから不思議だ。
つまり、警視に早く妻を見つけ出してほしいと哀願するコルバン氏が、”妻の失踪を心から哀しむ夫”を演じていると映るのだ。そういう視点から見ると不自然なまでにオーバーに表現されるコルバン氏の喜怒哀楽も納得できる。
そこへ、コルバン氏にとっては絶対にあり得ない”妻の帰還”。妻が帰ることがないことを誰よりもよく知っているコルバン氏は、その真意を謀りかねて吠える吠える。(^^;) あの〜、それだけ落着きなく吠え立てたら、誰だってどうかしたのかと思っちゃうのじゃないかな。>コルバン氏
結末を知っているミステリーを複数観るのは、どうかと思っていたけれど、その心配は杞憂だった。初日には気づかなかったことに気づいたり、初日にコルバン氏に感情移入して胸が苦しくなりつつ観ていたのを、千秋楽では罠をかけて徐々にコルバン氏を追いつめる様子を楽しんで観られた。それぞれの演技の意味の表と裏を観られたという感じだろうか。こういう見方をして舞台を観たことは初めてだったのでその意味でも非常に新鮮な舞台観劇だった。
初日の感想で、南野陽子さんの声云々に触れたが、千秋楽に感じた感想は全く違い、南野さんはこんなに上手かったのか、と初日の感想を非常に申し訳なく思った。キュートでちょっと小悪魔的な魅力が十二分に発揮されており、テレビで演じることの多いただいい人の役柄よりも、ずっとその魅力が輝いていたように思える。(*^^*)
神父さまは神父さまで、もうぶっちぎりのいい味を出していた。(笑)いいなぁ、神父さま。ああいう持ち味は個人的に大好きです。寿ひづるさんも、登場した途端に”私は宝塚のスターよ。私を観て!”オーラ全開だし、浮浪者さんも実に飄々とした風情を醸し出していたし、警視さんはタヌキ親父なのを見事に隠して最後にタヌキな正体を明かしていた。適材適所でキャスト的にも申し分ない配役だった。
もちろん!大沢くんのコルバンさんは大沢くんの持ち味である危うさをいかんなく発揮し、苛立ち、ブチ切れ、徐々に精神が追いつめられていく様子をリアルなまでに体現していた。いやいや、地で演じてるんじゃないかと思っちゃう。(爆)これ以上は考えられないはまり役。(^^)v
また、南野さん、大沢くん以外のキャストの皆さんについては、申し訳ないがそれ以前の先入観が全くなく、同時にどれほど演じてくれるのか、予想もしてなかったので、出来が彼らにとってどのようなものかは全く判らない。
そしてラストの大どんでん返し。誰が誰をだますために、この罠を仕掛け、自称コルバン夫人と神父の目的は何なのか!
自称コルバン夫人が現れたのに、全く名乗り出る気配のないコルバン夫人。それは何故?
精神病院にコルバン氏を入れようとする自称コルバン夫人と神父。コルバン氏と自称コルバン夫人に自白剤を使って、どちらがウソを言っているか判定することを提案する警視さん。その提案を受け入れた2人の前。すきをついて注射をすり替えようとする仕草を見せる自称コルバン夫人と神父に怯え、それを警視さんに訴えると……実は警視さんもグルだったのだ!これは初日にも予想できていたこと。
しかし、その先は予想できなかった。恐怖に戦慄くコルバン氏に、コルバン夫人の居場所を迫る3人。戦慄の中でコルバン氏はついにこらえきれず叫ぶ!近くの森に流れる川の急流の中に夫人はいると……。
コルバン氏からの夫人の捜索願いが出されて3日後に、夫人の遺体は既に急流から発見されており、その状況から警視はコルバン氏が犯人と確信していたが、証拠がないためにコルバン氏を罠にかけ、自白をた得るために、自称コルバン夫人をしたてあげたのだ。う〜ん、これは予想外だった。してやられたわ。(^^;)
自称コルバン夫人と神父さんは警察官で、浮浪者さんも看護婦さんも警察に協力して、お芝居をしていたのだった。つまり、コルバン氏を除く全ての登場人物がコルバン氏に対して罠をしかけていたのだった。
見事な結末に拍手。ぱちぱちぱち。
初日にも感じたのだが、1幕目の前半の方で、コルバン氏が窓に歩み寄るシーンの後ろ姿での歩き方、立ち方、全てが美しくてカッコ良く絵になるの。(*^^*) 思わずうっとり。
幕間にロビーをフラフラしているとロビーの片隅にお1人で何気なく煙草を吸われてる中尾彬さんがいらっしゃる!びっくり。イメージ的に中尾さんのようなスターさんは何方かに囲まれてるような気がしてたのでホントに本人か思わず自問自答してしまった。
29日に「スキッと一心太助」を見ていて、やっと中尾さんがいらした理由を納得。「スキッと一心太助」で中尾さんと大沢くんは親子役を演じていたのだ。29日に見るまで気がつかなかったとは本当に自分のオオボケさ加減にあきれた。(@_@)
ひとつ気になったのは、追いつめられて精神が圧迫されていくコルバン氏に向かって、劇中に何回となく叫ばれた差別用語があったことだ。当然、放送禁止用語なのだが、生の舞台では使っていいものなのだろうか。だとしても、配慮があって然るべきものではないだろうか。聞いていて気持ちのいいものでは決してなかった。
劇中におけるセリフのひとつひとつにも木目細かな心遣いをお願いしたい。
千秋楽のカーテンコールでも最後に大沢くんは舞台の上で大の字になった。東京公演千秋楽の幕が降りたことへの安堵感だったのだろうか。
カーテンコールでの素の大沢くんの晴れ晴れとした笑顔がよかった。(*^^*)
次の大沢くんの舞台がとても楽しみ。!(^^)! それまでにもっともっとボイストレーニングを積んでね♪