PINO・千秋楽 感想
2000.03.31 (金) 府中の森芸術劇場 18:30〜21:00
19日の品川きゅりあんの初日から、東京芸術劇場、アミューたちかわと場所を移して公演を続けていた「PINO」も、府中の森芸術劇場の公演で千秋楽。その千秋楽の公演を観た。
しかし、やはり府中は遠かった。そういうと多摩地区近辺の方からブーイングが出るだろうが、山の手線内部にあるオフィスを定時退社して、速攻、府中の森芸術劇場に向かったのにも関らず、劇場に入った途端、開幕を告げるベルが鳴り響き、ドアから席に向かう途中で客電が落ち始めるスリリングな幕開けだった。
その前、仕事中もいろいろあり、実は午後のとある時間には千秋楽を観るのは絶望でメモリアルチケットになると半分諦めそうになったときもあった。それでも諦めたらそれで終りで最後まであがいてみようと思い直し、あがいてあがいて、なんとか定時帰りをできるところまで持って行ったのだ。人生、諦めたらそこで終りって、改めて実感した。
いや〜、それにしても、午後のあの時間、あれだけ集中して仕事したのって久しぶりだわ。やはりエサが目の前にあると人間、不可能を可能にできるものなのね。(苦笑)
前置きはこの辺にして(^^;)、本編はというと、先週の土曜日に東京芸術劇場で観たときからみても、更に贅肉が落とされて、テンポがよくなっていた。もう初日のときからすると格段の差だ。
初日に観たとき、ちょっと長くて冗長と思えたところが、かなり大胆にばっさりと切られて、観ていてすごく展開がすっきりしたところがいくつもあった。
シーンとシーンのつなぎの間合いがよくなったのも観易くなった一因ではないか。ポンポンとシーンが変って行くので注意を他に逸らせないで舞台に感情を入れたままで進めたように思える。
キャストの皆さん、これが千秋楽ということもあって、ものすごく気合が入ってらっしゃった。特に小悪党兄妹の妹カルメンがこれまでも高かったテンションが更に高くなって、これでもかってノッて演じてらしたように感じた。カルメン役の方のファンになりそう。こういう演技は私の好みにはまってるのだ。!(^^)!
しかも今回、「PINO」を観た3回中、席が一番前で舞台中央に近かったものだから、余計、キャストの皆さんが目の前で演じられて、細かい表情までよく見えたので尚更だ。
山本くんも最初のシーンの10歳のピエール少年のときから、役に入りきって、10歳の少年、その素直な表情、満面の笑みを表現していた。
ロボット・ピノになってからも、ロボット演技が前よりもかなり冴えていた。ただ踊りのときにロボット演技がごくたまに甘くなったように見えたのは、演じている方の疲れか、見ている方の気の迷いか。
山本くんを含め、皆さん、公演を重ねて、舞台全体が円滑になり、演技も円くなり、余裕を持って演技して、いろいろな遊び心を出したり、アドリブが入ったりするようにもなっていた。
こういうのを感じると、1回こっきり集中して観るのもいいけど、何回か回を重ね、舞台全体が変っていく様を観るのも、生の舞台を観る面白さのひとつの魅力だと痛感する。
クライマックス、ピノが交通事故に遭いかけた少年を助け、自ら”死んで”いくシーン、「僕をもう修理しないで。」そういう前に、一瞬ではあるが、安堵した表情を見せたのがものすごく印象に残っている。”これで、逝ってしまった大好きなあの人たちのところに行ける。あの人たちにまた会える。”そう心で思っているのであろうことが、痛いほど伝わってくる表情だった。
やだ、思い出しただけで目頭が熱くなってきてしまった。(;_;)
さすがに3回目。もう泣かないだろうと思っていたけれど、気づくとやはり涙が頬をぬらしていた。そして、それに気づくともう後は拭っても拭っても涙が溢れてきた。胸に染みるシーン。
カーテンコールで、今まで観たときは、バク転をしていたのが、千秋楽はしなかったのは胸に万感迫るものがあったからなのだろうか。
キャストの皆さん、満足そうにうなづく方、涙ぐむ方、様々な表情を浮かべられていた。
「初舞台で、他の出演者の皆さんに支えられて演じられました。」(というようなこと。大意だと思って。)と挨拶した山本くん。胸中に何が到来していたか。
2度目のカーテンコールで幕が開いたとき、後ろを向いていて、幕があがって慌てて振り返って、「目から水は出てません。」(芝居中、涙は目から出る水とピノは最初理解した。)と言って客席を沸かせた。ん〜、でも、目から水が流れているように見えたけど。(笑) それはとても幸せな満足の水だったのだろう。
カーテンコールが終り、本当に幕が降りた、緞帳の向こう側から、キャスト・スタッフの皆さんが集まってのだろう、三三七拍子の手拍子が聞こえてきた。
それに気づいた客席のファンも客席で緞帳の奥から聞こえる手拍子に合わせて手拍子を打った。そういう関係がなぜか心地良かった。いい雰囲気の中で芝居ができたと思う。
今回、幕間で何人かの子供たちが「ピノ」の歌を歌っているのを耳にした。ファンが10歳のピエールにため息をつくのも、ロボット演技の山本くんを喝采するのも大切なことだと思う。それも大事だけれど、子供たちが「ピノ」を気にいってくれたようで歌を歌っているのを聞いたのが嬉しかった。
ファミリーミュージカル。子供たちが「ピノ」を気に入ってくれたり、生のお芝居のよさを感じてくれたり、ちょっと年上の子はこの舞台のテーマである家族の大切さとか平和とか考えてくれたり、そういうことがあったら、この舞台が上演された意味は達せられたのではないだろうか。
スタッフ・キャストの方々には、夏に更にパワーアップした芝居をがんばっていただきたい。
最後に一言。開演前に、携帯電話の電源をオフにすることを忘れずに。