クレオパトラ観劇記

1997.10.18(土) 日生劇場 12:30〜


幕前

 9/27休演のために振替になった席はグランドサークルのほぼ中央。以前から1度入ってみたかったGC席だが1つの椅子に両腕分の肘掛けがある。(1・2階の席は肘掛けは両隣りの人と共用)これでまず驚く。しかも舞台正面の席は椅子と椅子の間隔が20〜30cmあり、人が通り抜けできた。これだけではなく、背もたれまで若干高くなっている。待遇のべらぼーにいい席だった。本当に「舞台鑑賞」にはもってこいの席。

 1階席を眺めた客層の感覚は、先日の「菊がさね」の女性客を「おばさま方」と表現したのを基準にすると「おねえさま方」かな。男性客の姿が目に付いたのも印象的。

第1幕

 大地真央さんの登場の衣装は地味だが随所に凝ったところがあったのを皮切りに、シーンが変わる毎にお着替えで1幕だけで10着以上のお衣装をお召しになられたような気がする。”エジプト的”なお衣装もあるし、どう見ても”ヨーロッパ的”(しかも中世以降)なお衣装もあった。衣装の総額が話題になった舞台であるだけに次々と登場する衣装で目の保養をさせていただいた。個人的には第1幕の衣装の中では、第1幕のラストの黒のドレスがお気に入り。

 真央さんの演技は堂々と貫禄のある女王然としたものだったように思う。この舞台はクレオパトラを超人的なスーパー女王さまとは捉えずに、王位の責任を自覚しそれを全うしようとする1人の普通の女性を描こうとしていたようだ。(王位の責任を全うしようとしたら、それ自体非常に大変で普通人にはできないものだが……(^^;))そのためにやや統治者としての描きかたが不足したようにも感じられた。愛に生き、尚且つ、為政者として国民の頂点に立って、あの激動の時代のエジプトを導くとしたら、あの結末は彼女でなくとも(全く別の個性を持つ男性王だったとしても)やむなしなのかもしれない……。

 赤坂くんの第1幕の出番は、第1幕終盤のローマのクレオパトラの別荘へ大叔父にあたるシーザー(赤坂くんのオクタヴィアヌスはシーザーの姉の孫)をオクタヴィアヌスの姉のオクタヴィアとともに彼の留学出発の挨拶に訪れるシーン。ここでの役の年齢は18歳。コンコンコンと咳をしたのが「病弱で……」の伏線。あのくらいの咳で病弱と言ってもらえるなら私たちはほとんどは重病人だなぁ。(^^;)(変なとこに突っ込んですみません。m(_ _)m)
 なかなか博識なとこを披露して将来有望な人材であることをアピール。表情を表に出さずに淡々と演じているところがその辺を現している。ウワサ通りニコリともしないわ>オクタヴィアヌスさま。

 紺の衣装で髪はまだ普通におろしてたように思うのだが……その辺、記憶があいまい。(^^;) 確かに言えるのは第2幕とは髪型が違ってたということ。

第2幕

 第1幕終盤でシーザーが暗殺され、第2幕のクレオパトラのお相手はアントニーさん。第1幕でシーザーの平さんとアントニーの江守さんが並ぶシーンあり、そこで平さんのほうが江守さんよりも背が高いのに驚いた。シーザーは”さすがの英雄”だったが、アントニーは”のんべの人のいいおじさん”で、クレオパトラはそんなところに母性本能を刺激されたのかなぁ。(?_?)

 元老院でアントニーはローマの誇りを失ったので討つべしと元老院議員諸氏に迫るオクタヴィアヌスさまには威風堂々、他を圧する気概があった。このシーンのラストでの決めは「これぞ主役」という輝き方をしていた。(*^^*)
 このとき全員白の同型の衣装で襟元のラインがオクタヴィアヌスさまは3本で他の方々は1本だった。武将姿も凛々しかったが、この衣装の清々しさも捨て難い。(^^)v
 ヘアスタイルはオールバックでピシッと固めていらっしゃった。オールバック姿なんてはじめましてかしら。(笑)ちょっときつめの目元のメイクと共に怜悧な政治家を演出するのにこのヘアスタイルがよく役立っていた。

 そして、クレオパトラ・アントニー軍を討つオクタヴィアヌスの甲冑姿も凛々しくきまっていた。身長がある上に、甲冑などを身につけているので、肩幅・胸板が通常以上にガタイがよく見え、辺りを打ち払う威厳すら感じさせた。舞台栄えのする人だ。
 クールに2人を追いつめていくオクタヴィアヌス。舞台進行上は、主役カップルに敵対する悪役の役回りのはずだが、彼が演じているオクタヴィアヌスさまにはそんなところは全く感じられなかった。どう考えてもあれは”悪役”ではないよなぁ。”敵役”が最もふさわしい表現ではないだろうか。彼は彼の正義のために生きていた。ローマ市民の生き方としてはアントニーの方が裏切り者なのだろう。

 ラストシーンはヘビに首筋をかませて自害したクレオパトラを駆けつけたが一足遅かったオクタヴィアヌスが呆然と見つめるシーンだった。1つの王朝(エジプトのプトレマイオス朝)が終わり1とつの新しい王朝(オクタヴィアヌスは数年後、初代ローマ皇帝となる)が誕生する歴史の大転換期を象徴するシーンで幕が降りた。
 1部を除くほとんどの観客がクレオパトラの美しさと衣装の素晴らしさに魅入っている、このシーンで私は1部の方々と多分ご一緒に、オクタヴィアヌスさまの表情を追っていた。(笑)最後までポーカーフェイスで通したオクタヴィアヌスさま。最後のシーンで”オクタヴィアヌス”は何を想っていたのだろうと感慨にふけっていたところで緞帳がおりて、オクタヴィアヌスさまのお姿を隠してしまった。もうちょっと余韻を楽しみたかったのにぃ!(;_;)

 チラシのような衣装はなかったのであのようなナマ脚は拝見できなかったが、軍装の裾のスリットの隙間からナマ脚がチラチラと覗いていたのが逆にセクシー。(笑)

 カーテンコールでも最初はオクタヴィアヌスの表情のまま。最後の方で少し表情がやわらいだかな?と思えたが終始、役になりきってのカーテンコールだったように思う。

幕後

 「SANADA」・「魔女の宅急便」・「火の鳥」・「狸−TANUKI−」と赤坂くんの舞台を観てきた中では、出番的・セリフ的には一番少なかった舞台だが、私はこの「クレオパトラ」のオクタヴィアヌス役の赤坂くんが一番好きだ。(星影姫も捨て難いが……(爆))(*^^*) 一番、その役になりきっていたように思える。
 ガタイもいいし、舞台栄えもするので今後も年1・2本のペースで舞台出演をしてほしいな(*^^*)