ミツコ〜ウィーンの伯爵夫人〜
2000.06.11 (土) 新橋演舞場 17:00〜21:00
2000.06.18(日) 新橋演舞場 12:00〜16:00
明治期に日本の庶民の家庭から、由緒正しいオーストリア貴族に嫁いだ実在の日本女性の半生(ほぼ一生と言っても過言ではないが取りあえず。)を描いた舞台。
主役のミツコに大地真央さん、その夫ハインリッヒに草刈正雄さん、その2人の間に生まれた次男役が赤坂くんで、この顔のコイお2人からだったら、赤坂くんが息子でも不思議ではないと、そのキャストにうなずいている私。(笑)
草刈さんと赤坂くんは現在、NHKの朝の連続テレビ小説「私の青空」共演しているけれど、役柄上、絡みのシーンはなし。そして、こちらの舞台でも親子役だけど、父親は次男が子供の頃に亡くなってしまうため、絡みのシーンはなし。不思議な草刈さんと赤坂くんの共演2つ。
1幕目はミツコがハインリッヒと恋をして結婚、次男のリヒァルトくんまでは日本生まれ。そしてオーストリアに渡ってクーデンホーフ家に根をおろし、6人の子供に恵まれるまで。なわけで、リヒァルトくん(子供時代)は登場していたけど、リヒァルトくん(成年)の赤坂くんの出番はなし。
2幕目早々にハインリッヒさんはお亡くなりになってしまい、ミツコは32歳で6人の子供を抱えて未亡人に。日本に帰らずオーストリアで子供たちを育てていく決意をする。2幕目ちょうど中盤にとあるパーティ会場で18歳のリヒァルトくん登場。18歳の大学生。大学の制服姿での登場に、ちょっと18歳は……と思ってしまったりして。(^^;)
ミツコの親友エリーゼ(秋川リサさん)に紹介されて、永遠の恋人エバ・ローラン(床嶋桂子さん)との運命の出逢い。お互いに一目ぼれながら、エバの方が14才(?だったかな、10何才かなのは確か。)年上。
ドナウ河畔での真冬の待ち合わせでリヒァルトくんのマントばさばさが個人的にgood。
う〜ん、リヒァルトくんの最もお気に入りの衣装はウィーンのミツコの屋敷でのシーンのブラウンのパンツに白の地にブラウンのチェックのジャケットかな。(*^^*) ヘアスタイルもこのときのヘアスタイルが一番好き。劇中の年齢設定でも、20歳をちょっと過ぎた頃で、実年齢と最も近い頃のシーンじゃないかな。
話が逸れてしまった。(^^;) 第1次世界大戦が始まり、徴兵されたリヒァルトくんだが、風邪を結核と軍医さんが誤診してくれたおかげで草々に除隊。自由の身になると、徴兵された経験から、エバとのことをミツコに打ち明ける決心を固めて、エバとのことをミツコに認めてもらえるように頼む。ミツコとエバはリヒァルトくんがエバと初めて会ったパーティで紹介されてるので旧知だったのだ。でも、ミツコはまさかエバが愛息子の恋人とは、打ち明けられるまで想像もしていなかった。
子供たちの中でもリヒァルトくんを最も愛していて、いいとこのお嬢さんと結婚してほしいと夢を描いていたミツコとしては、10いくつも年上の女性との仲を認めてくれと言われてちょーショック。エバに女性として侮蔑の言葉を浴びせる。で、亡夫ハインリッヒがミツコより14才年上なのを逆手に取られて、男性が14才年上ならよくて女性が10いくつ年上じゃよくないのかと反撃されてしまう。ショックなのは判るけど、このときのミツコの態度はちょっと、ね。エバも売り言葉に買い言葉で言い過ぎてるかもしれないけど。
結局、ミツコに勘当されて、エバと共に去っていくリヒァルトくん。いさぎよし。
3幕、リヒァルトくんに去られた経験からミツコは次女オルガの仕立て屋さんと結婚したいとの希望を許す。執事に「仕立て屋ならよくて女優はダメなんですか?」の問いに「私、エバはだいっ嫌い!!!!!」 その言葉を聞きながら、エバが嫌いだからリヒァルトくんとの仲を認めなかったのか、リヒァルトくんが選んだ女性だからエバが嫌いなのかどちらなのだろうと考えていた私。おそらく後者なのだろうな。きっとミツコが気に入ったいいとこのお嬢さんと結婚していたとしても、なんだかんだ難癖つけそうな気がする。(^^;)
第1次世界大戦が終結し、オーストリア=ハンガリー二重帝国は解体。クーデンホーフ家の所領のある地はチェコスロバキア領(あれ?ハンガリー領だった?)となる。ミツコは半生をかけてオーストリア人になろうとしたので、オーストリア国籍を選び、所領を継いだ長男とは国籍を異にすることになる。
この当時から汎ヨーロッパ主義=ヨーロッパはひとつになって結集するべき=今のEUの基本概念を唱えていたリヒァルトくんは、解体したオーストリア国籍でこの思想を唱えるのは、オーストリアの復活を唱えていると誤解されるので、新しく生まれた国の国籍の方が都合がよいと、長男と同じ国籍を選択。このときのリヒァルトくんもスーツ姿と相まって凛として清々しかった。このときにミツコとリヒァルトくんの和解が成った、のかな。多分。相変わらず、エバとの仲は認めてないけど。(苦笑) エバとはしっかり結婚したリヒァルトくんの心意気に感服。
最後のシーン、晩年、ウィーン郊外に次女オルガと暮らすミツコを尋ねるリヒァルトくん。大学の講師として働いてためたお金をミツコが奉仕している孤児院への寄付に渡すリヒァルトくん。ここで完璧な和解成立。トレンチコートがダンディ。
カーテンコールでは草刈さん赤坂くんが2人並んで登場してご挨拶、拍手を受ける。そして主演の大地さんが登場。当然、夫役の草刈さんがエスコートすると思って見ていたら、エスコート役は赤坂くん。そうかミツコ、あなたは夫のハインリッヒさんよりも息子のリヒァルトくんの方がいいわけね。(爆笑)
3幕、幕間休憩2回計55分、公演終了まで4時間弱の超大作。1人の人間の半生をドラマチックに描くとそのくらいはかかるのか。
汎ヨーロッパ主義を唱えたリヒャルトくん。当時は国粋主義の方が支持され第2次世界大戦が勃発してしまったが、第2次世界大戦後、ヨーロッパはリヒァルトくんが目指した姿に向かって動き出した。
EECが生まれECとなり、今、EUとして再来年にはヨーロッパにユーロという通貨で通貨統合が果たされる。リヒァルトくんの目指したものが実現に向かって実を結ぼうとしているときに、この舞台を見られたことが感慨深く、それを思うと目頭が熱くなる思いだ。
予想していたよりも出番が多く、印象的な男性だったリヒァルトくん。この役で赤坂くんは何をつかんだのだろう。きっと何かを得ているはず。