盲腸入院闘病記


09-18
 池袋から帰宅し、夕方からずっと胃のあたりが痛い。夜耐え切れずに埼玉医大に。
 レントゲンなど取って診断結果、腸結束、腸炎、感染症の可能性あり。となる。とりあえずは経過を見るということで、抗生物質をもらい帰宅。
09-19
 朝、痛みが横っ腹から下腹へと移動。特に右わき腹というか足の付け根に近いところが痛い。ていうかこれ盲腸じゃね?
 早々に埼玉医大に逝きたいところだったが、こういう時に限って「妹の彼氏が親御さんを連れて挨拶に来る日」だったりして家を出られず、青い顔して挨拶しつつ、2時過ぎに医大へ。
 痛みの変化を訴えつつ再度検査。今度は下腹部のレントゲンも取る。診断結果、恐らく盲腸。何しろ開腹しないと確実なことはいえないということで100%ではない、ってそりゃそうだけどさ。まだ腸炎やその他の可能性もあるとのことで。
 で医者曰く「どうします?、抗生物質で抑える、いわゆる「薬で散らす」という手もありますが」「そのほうがいいんですかね」「いいかどうかはこちらからはいえませんが、その場合痛みが続きます」そりゃ勘弁「斬ってください」「わかりましたではこれから早速」ってはえぇなおい!
 その後、麻酔の危険性や、腰椎麻酔(「局所麻酔ですか?」「局所だと痛みに耐えられないでしょうから半身麻酔で行います」)で間に合わなかった場合の全身麻酔のリスク、輸血の承諾書などの手続きを経て、手術着に着替えてストレッチャーへ。この間ずっとめちゃくちゃ痛いまま。
 そして手術室へ。始めて見る、下からの無影灯。背中に痛み止めの局麻を打った後、腰椎麻酔のごぶとい針が背骨に刺さる。痛くは無いが刺さってるのがわかる。
 ここで毛を剃られる。俺の腹毛や陰毛が薄いからか?、普通もっと早くない?まあいいけど。
 麻酔の効きを確かめるためアル綿を体に押し当てて「冷たいですか?」と場所を変え何度も聞かれる。体をアルコールで拭かれたためか寒い。臍上あたりまで麻酔が効いてきたあたりで術式開始、っていうか俺いつ斬られたのか気づかなかった。
 麻酔の効きがいいためか、「あー斬られてる斬られてる」みたいな感覚はほとんどない。やがて患部が出てきたらしく、なんかあれこれやってる。レーザーメスらしき音が「ジジ!ジー!」と鳴る。意識があるってのはあまり気分が良くないな。
 テレビとかで見たことあるけど、脳の手術で患者の意識があるままやるってのを見たことあるけど、あれもどうなんだろう。なんつうか「いいから寝かせて」とか思うよな。
 そのうち「グゥォー」という掃除機の弱いような音と、ズビズビいう吸う音。どうやら、虫垂から出た膿んだ部分を吸ってるみたい。ていうか何故かみぞおちのあたりが痛くなってくる。
 「いててて」「どうしました?」「みぞおちのあたりが痛いんですけど…」「ああ、今膿を吸ってますから、脂肪とか腹膜が繋がってますから」ってイテテテ痛い痛い!!泣きはしないが「いでーー!」とわめく俺。
 脂肪吸引手術とかする奴は正気じゃない。今決定。
 そのうち終ったらしく、縫合している気配。ドクが「こんなになってましたよ」と、俺の虫垂を見せてくれるが、眼鏡が無いため良く見えない。なんか子供の小指の先くらいの赤黒いのが見えただけ。
 服を戻し、一時病棟へ。
 ベッドへ突っ込まれ、明日を待つ。時計が無いので時間がさっぱりわからない。
 結局夜5回起きた。起きるたびに「今何時ですか?」と聞くが、そのたびに1、2時間しか経っていないことにガックリ。
09-20
 いつのまにか朝。傷口が痛い。喉が死ぬほど乾くがまだ飲めない。痛いので寝られない。腸の機能が回復していないため腹が張って痛い。腸の動きを良くするには動くしかないので、トイレに逝きつつ点滴台を杖代わりに必死に歩く。ベッドに乗り降りするたびに腹の中身が出そうになるほど痛い。
 夕方、病室を移動する。
 その後歩く。病院の廊下を傷みを我慢して歩き回る。
 夜、こうなることを予想して日曜日のうちに買っておいたポケモンエメラルドをプレイしつつ痛みに耐えて寝る。
09-21
 一応ほんのわずかだがガスが出たので飲み食いが可能になる。が、腹が張っていて出来たもんじゃない。蠕動運動を起こすために、痛いのを我慢してとにかく歩く。歩く。
 メシも無理矢理食う。食ったら歩く。痛いが歩くっていうか、傷とかの痛みより腹が張る痛みのほうがでかい。よって歩く。看護婦が「よく動けるなぁ」的な視線を送ってくるがかまうもんか。
 下痢だが多少はお通じも来た。寝ているあいだも腹部に刺激を与えてひたすらに腸の動きを回復させる。
 病院のメシは不味い。たとえば今日は、おかゆ、野菜となんかの肉をやわらかく煮たの、豆腐の煮たの、野菜浅漬けみたいなの。特徴は、味噌汁とかといういうのがちっとも出ない事。塩分の関係からか?これを水で食えと?とか思うが仕方ない。食事トレーが乗ったワゴンを見ると、お皿の上に流動食のパックが乗ってるだけの人のもあって、これはこれでひどいねとか思う。
 夕方頃から少し腸の具合も良くなる(張りが減った程度だが)。痛みを我慢して更に歩く。
09-22
 朝、回診が来て様子を見られる。
 「この分なら大丈夫ですね。明日退院でどうでしょう?」
 はえぇよ!
 まあいいけどさ。必死こいて歩いたお陰で腸も動いてきたし、とりあえず隣の大阪人のジジイがうるせぇので早く出たい。
 俺の今居る病室は8人部屋で、呼吸器系と消化器系との部屋らしい。部屋に響く音は、肺が収縮してしまわないための水パイプみたいな機械が出すチャポチャポという水音と、「これ死んでない?」っていうような咳と痰の詰まった「グロッパゥエッポ」という音ばかり。出たい。
 仰向けになって腹を良く見ると、やはり右の腹が少し膨れている。押して痛すぎるところを除いてマッサージして押す。暇があって気力もあったら歩く。
 家に連絡を取り詳細を伝える。明日でおさらばだ。

09-23
 午前中、手続きまで歩く。傷口は金属の針で縫合してある。わかりやすく言えばホチキス(ホチキスはホチキス社の登録商標です)で止めてある。
 まだ腹も痛いし腸の動きも悪いが、この陰気臭い病室からはおさらばだ。
 職場に出す診断書を見ると、「虫垂炎、初期腹膜炎」とあった。あぶねぇな俺。