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2000.3.21.発行 第66号

丸木俊さん葬儀 弔辞


丸木俊さん葬儀 弔辞
1月17日に執り行われた葬儀では、土屋義彦さん(埼玉県知事)、 松本徳一さん(秩父別町長)、水原孝さん(丸木美術館理事長)、松谷みよ子さん(作家)から弔辞をいただきました。
松谷さん、土屋さんの弔辞をご紹介します。

松谷みよ子さん

俊先生。
いつの日か位里先生の許へ旅立たれるのは分かっていましたけれど、こんなに早いとは思っていませんでした。
だって外国で位里と一緒に絵を描くと、位里はさっさと描いてさあ行こうっていうの、今度はゆっくり描けるわって おっしゃっていたのに、もう行ってしまわれたのですね。

俊先生。私は先生の油絵展をはじめて拝見したとき、重厚な盛り上がるタッチに地中深くおろしたいのちの根を 思い浮かべました。
地の底の闇、その闇をまさぐり生きる力を吸い上げたからこそ、あの鮮やかな色彩が花開くのだと。

私ごとで申し訳ないのですが、先生がアウシュビッツからお帰りになり上野の美術館で展覧会をなさったとき、 あまりに弱られている御様子に胸を突かれました。
ユダヤの亡くなった人たちがずっしり肩にのっているの、とおっしゃいました。
そのとき私は「赤ちゃんのわらべうた」の台本を持っていました。私は思わずいったのです。
「先生、先生が死を、戦争を描きつづけてこられたのは、産まれてくる赤ちゃんの幸せのためですよね。 だから赤ちゃんの本を描いて元気になってください」って。
「私、まっさきにこの本を描くわ、そうして元気になるわ」
先生は台本を抱きしめておっしゃいました。
こうして「あそびましょ」という絵本が生まれ、ボローニャで国際的な推奨を受けたのでした。

先生の描かれた戦争と死は、被害者の戦争にとどまらず、加害者としての戦争、さらに文明の世にひそむ公害の闇にも 鋭い光を当て、私どもへ警告されたのです。
位里先生と俊先生、たぐいまれなおふたりのお仕事は、まさに二〇世紀の象徴として全世界的なものでした。
なのに日常の俊先生はやさしく愛にあふれ、日だまりのなかで、猫のお産の話がはじまったらときを忘れるほどなのです。
けれどあのとつとつとした語り口で沖縄の虐殺を語るときの悲しみに満ちたお声はいまも耳にのこっています。

光と闇、烈しさとやさしさを残して俊先生は旅立たれました。
ほんとうにありがとうございます。
先生のお仕事と語りを、次の世代に残していくことが私たちの仕事です。
どうか安らかにお眠り下さい。

埼玉県知事 土屋義彦さん

本日ここに、故丸木俊様の葬儀・告別式が、かくも厳かに執り行われるにあたり、謹んで追悼の言葉を申し上げます。

去る1月13日、俊様の突然の訃報に、大きな驚きとともに、深い悲しみを覚え、いまさらながら、 運命の無情さを感じざるをえません。

今、こうして、御霊前にあって、思い出しますのは、去る平成7年11月14日の県民の日に、 御夫妻の御功績に対しまして県民栄誉章をお贈りいたしましたときに、俊様にお目にかかり、 人間的にも大変魅力のある方だと感じ入ったことでございます。

顧みますと、あなたは、先に亡くなられた夫の位里様と共に、「原爆の図」など反戦・平和をテーマにした作品を制作し、 東松山市内に「原爆の図丸木美術館」を開設されるなど、活発な芸術活動を展開し、郷土埼玉の芸術文化の向上に 多大な貢献をされました。
そして原爆の残虐性、戦争による人間性の破壊や「水俣の図」の制作などを通して、平和の尊さと環境の大切さを 埼玉県から世界に向けて訴え続けたのであります。

晩年は、命の尊さをいつくしむように、身近な草花などを描き、子供の絵本を作成されるなど、 慈愛に満ちた優しさを示しておられました。
あなたのこのような情熱と御努力に対しまして、私は、以前より心から敬意を表しておりました。
御夫妻が希求された世界平和に対するお気持ちは、私も含め700万県民の共通の思いであると確信いたしております。

私は、今、愛する郷土埼玉を、平和で安らぎに満ちた、全世界に誇れる郷土とするために、 「豊かな彩の国づくり」に全力をあげて取り組んでいるところでございます。
こうした中、あなた様のような平和をこの上なく愛された方を失いましたことは、本県はもとより、 世界の平和の実現にとりましても大変大きな損失であり、誠に残念であります。

しかしながら、あなたの残されたすばらしい業績が、今後とも、世界の平和の実現に大きく寄与するものと 私は確信いたしております。
そして、ご子息の丈二様をはじめ残されたご遺族、関係者の皆様とともに、私は、世界平和の実現に向けて 全力を傾注してまいることをここにお誓い申し上げます。

もうお別れの時が迫ってまいりました。御遺徳を慕う多くの人々とともに御霊のやすらかならんことを 心からお祈り申し上げまして、追悼の言葉とさせていただきます。

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