2019年度 企画展

サーカス博覧会

2019年4月2日(火)~5月26日(日)

日本のサーカス文化や見世物小屋を彩った絵看板、ポスターなどの資料や絵画、記録映像などを多数紹介。

菅実花展 The Ghost in the Doll

2019年6月1日(土)~7月15日(月/祝)

子を失くした母の傷を癒す「リボーンドール」を、湿板写真で生きているように撮影した死と記憶をめぐる展示。

紙芝居ができた!

2019年7月20日(土)~9月1日(日)

アーサー・ビナードの新作紙芝居『ちっちゃいこえ』はどのように生まれたか。《原爆の図》再発見の旅。

堀浩哉+堀えりぜ「記憶するために―わたしはだれ?」

2019年9月7日(土)~11月17日(日)

「3.11」後に東北を想うパフォーマンスや展示を精力的に展開してきた堀浩哉+堀えりぜの集大成。

長沢秀之展「対話「私が生まれたとき」神戸 25年あと(未来)の記憶」

2019年11月23日(土)~2020年2月16日(日)

阪神淡路大震災から25年。神戸で生まれ育った人たちの記憶を絵と文章を組み合わせて提示する。

砂守勝巳 黙示する風景 

2020年2月22日(土)~4月5日(日)

沖縄や大阪釜ヶ崎、雲仙、広島などを撮影し続けた写真家の砂守勝巳の仕事を再評価する。


これまでの企画展

1999~昨年までの企画展の案内はこちらのページをご覧ください。


2020.2.22~4.5 砂守勝巳 黙示する風景


主催:原爆の図丸木美術館
企画協力:椹木野衣、砂守勝巳写真事務所

 砂守勝巳(1951~2009)は沖縄本島生まれ奄美大島育ちの写真家です。15歳で大阪へ移り、プロ・ボクサーを経て74年大阪写真専門学院に入学。75年に卒業し写真家として活動を始めます。主に写真週刊誌を中心に活動し、その傍ら、フィリピン出身の沖縄米軍軍属で生き別れとなった父を訪ねた旅を主題にした作品やも残しています。96年、写真集『漂う島とまる水』(クレオ刊)で第15回土門拳賞や第46回日本写真協会新人賞を受賞しています。
 本展は美術評論家の椹木野衣をゲスト・キュレーターに迎えた展覧会です。椹木は「生前の砂守がその仕事に見合うだけの評価を得られなかった」と評し、その仕事に離散の痕跡を見出します。初の大規模展となる本展では、未発表作品を含む約100点を展示し、没後10年を経た写真家 砂守勝巳を再発見し、光を当てる展覧会となります。


黙示する風景
 
砂守勝巳の名を初めて聞く者は少なくないのではないか。かくいう私もそうだった。しかしそれも無理はない。2009年に57歳で没した砂守は、生前にいわゆる「写真集」をほとんど出していない。唯一と言ってよい『漂う島、とまる水』で第15回土門拳賞こそ受賞したものの、私が彼のことを知るきっかけとなった1990年代初頭の長崎、島原半島での雲仙普賢岳の大規模噴火被災を捉えた連作「黙示の街」は、写真集になっていない。いま見ると、その1995年初頭に起きた阪神淡路大震災を皮切りに、災害の御代といってもよいほどの自然災害に見舞われることになる後の平成年間を先取りしたような写真に、思わず身震いがする。
 にもかかわらず、生前の砂守がその仕事に見合うだけの評価を得られなかったことには、様々な背景があった。第一に、砂守の出自があまりにもドラマチックで、その物語性が生涯にわたってつきまとった。軍属であったフィリピン人の父と、奄美大島出身の母とのあいだに沖縄本島で生まれ、のちに生き別れとなる父との再会を期して父の名を冠するボクサーとなり、西日本新人王決定戦を目前に挫折するも大阪で写真家に転じ、釜ヶ崎の生々しい現実を撮り続けた――こんな要約を聞いただけでも、その一端は窺い知れよう。もうひとつは、このような経緯で「カメラマン」になった砂守の主要な仕事の舞台は当時、一世を風靡していた写真週刊誌で、突撃ジャーナリズムを象徴するような写真をいくつも残している。だが、それは写真家としての評価とは違う。代表作『カマ・ティダ』も写真集ではなく、文章が中心の写文集だ。
 さらに言えば、そのような離散や被災にまつわる写真を撮る文脈が理解されていなかった。スキャンダリズムから一転するかのように雲仙普賢岳を撮ったのは、転身などではなく、日雇いに明け暮れる釜ヶ崎の路上生活者と、普段の生活から否応なしに避難を迫られた火の山の麓に住む民が、根源的に同じ流浪の運命を生きる者であることを見て取ったからだろう。さらに言えば、砂守が島原半島に心を注いだのも、かつてそこがみずからもクリスチャンであるキリスト教徒の迫害の歴史が刻まれていたからに違いない。そしてそれは「ヒロシマ」の爆心地から追われるように避難せざるをえなかった人々の見えない暮らしの跡にまで迫っていく。
 この展覧会では、砂守の背景に確実に存在した、こうした被災や流浪、そして迫害に共通する様々なる離散の痕跡に焦点を当て、それらを「黙示」することで、砂守勝巳という写真家を再発見するとともに、私たちがいままさに直面しようとしている新しい時代に、これまでとは異なる色合いの光を当ててみたい。(椹木 野衣、美術評論家)


 
雲仙、長崎 1993-95
 
金武、沖縄 1987-1991
 
釜ヶ崎、大阪 1998-99


【砂守勝巳】
1951年沖縄本島に生まれ、奄美大島で少年時代を送り、15歳で大阪へ。プロボクサー(神林拳闘会)を経て写真家となる。1975年3月、大阪写真専門学校(大阪ビジュアルアーツ専門学校)卒業。1984年、ドキュメント・フォト集『大阪流転』 で月刊プレイボーイ誌のドキュメント・ファイル大賞奨励賞受賞。1996年、第15回 土門拳賞・第46回日本写真協会新人賞受賞。2009年6月、胃がんにより57歳で死去。著書に『カマ・ティダ-大阪西成』 (IPC、1989)、『オキナワン・シャウト』(筑摩書房、1992、『沖縄シャウト』と改題し2000年に講談社文庫)、『漂う島 とまる水』(クレオ、1995)、『オキナワ紀聞』(双葉社、1998、『沖縄ストーリーズ』と改題し2006年にソニーマガジンズより刊行)など。


チラシはこちらからご覧ください。

 


オープニングトーク

〇2月22日[土] 午後2時 丸木美術館企画展示室
 出演 :椹木 野衣(美術評論家)、砂守かずら(モデル、エッセイスト)

※参加自由(入館料別途)