2018年度 企画展

風間サチコ展 ディスリンピア2680

2018年4月28日(土)~7月8日(日)

1940年の幻の東京オリンピックから80年後の未来へ、優性思想の持つディストピア的な「理想」の国家イメージを皮肉とユーモアを交えて木版画で表現する新作展。

追悼 儀間比呂志展

2018年7月14日(土)~9月9日(日)

2017年に亡くなった沖縄戦を描き続けた画家・儀間比呂志の追悼展。

加茂昂展 追体験の光景(仮)

2018年9月15日(土)~10月21日(日)

新進画家・加茂昂による広島、水俣、福島を「追体験する絵画」の試み。

広河隆一写真展 戦場の子どもたち

2018年10月27日(土)~12月1日(土)

パレスチナ、イラク、アフガニスタン、コンゴ、チェルノブイリ、福島。フォト・ジャーナリスト広河隆一が翻弄される命を見つめた50年の記録。

今日の反核反戦展2018

2018年12月8日(土)~2019年1月26日(土)

実行委員形式で開催される自由参加の「反核反戦展」。今日の問題意識が多数の表現者によって浮かび上がる。

原田裕規展 

2019年2月2日(土)~3月17日(日)

《原爆の図》に代表されるように、人類がいかにしてこれまでの「悲劇」 を乗り越え、継承してきたのかを、その表象の変遷を追う、気鋭の若手美術家の試み。


これまでの企画展

1999~昨年までの企画展の案内はこちらのページをご覧ください。


2018.4.28-7.8 風間サチコ展 ディスリンピア2680

 風間サチコは、徹底した独自のリサーチをもとに、主に木版画による漫画風のナンセンスな表現で、現在・未来につながる歴史の暗部を彫り起こすアーティストです。そのユーモアと鋭い社会批評眼を感じさせる作品は、近年、国内外で高く注目されています。

 今回発表する新作《ディスリンピック2680》は、優生思想の歪(いびつ)さに着目した風間が、構想期間4年をかけて戦前からの関係資料を収集しリサーチを続け、優生思想の持つディストピア的な理想の国家のイメージを、今まで制作した作品で最大という縦2.4m、横6.4mの巨大な木版画で表現しました。
 1940年―皇紀2600年に制定された「国民優生法」、同じくその年に開催される予定だった幻の東京オリンピック。そしてその80年後に開催される2020年東京オリンピック。過去と未来の国家的イベントに思いを馳せながら、作品では架空の都市・ディスリンピアにて、近い未来に開催されるであろうオリンピック「ディスリンピック2680」の開幕式典が、虚実入り乱れたスタジアムを舞台に、皮肉とユーモアを交えて描かれます。健康至上主義の祝祭と人類淘汰の地獄を、鋭く木版に刻んだ新作にご期待ください。

 また、ロサンゼルスオリンピックにおける馬術競技の金メダリストで、のちに硫黄島で戦死した悲劇のヒーロー西竹一と、近代オリンピックの象徴、近代五種のイメージが合体した機械化男爵「近代五種麿」を描いた《決闘!硫黄島(近代五種麿参上)》、精神論の先行した体育教育と軍隊を、アルミホイルを貼った襖に描き、鍛えれば勝利する(夢はかなう)という幻想を表現した《人間富嶽》も展示します。

協力:無人島プロダクション


●出品作品

ディスリンピック2680
(新作のため、作品は展覧会にて発表します)

人間富嶽

2017年 水性顔料ペン、油性ラッカー、アルミ箔、襖 177 x 337 cm

 “富士は日本一の山”という歌詞で昔から学童が学んだように、富士山は日本人の誇りであり「一番」の象徴です。その裾野には演習場が広がり、戦前の帝国陸軍時代から現在の陸上自衛隊に至るまで厳しい戦闘のトレーニングが行われています。このアルミ箔の襖絵には、日本一の象徴「富士山」の裾野でトレーニングを積む陸軍と陸自の戦車と、人間ピラミッドという名の組み体操に励む学生の姿を描いています。人間ピラミッドは、リスキーで危険な体操ですが、「子供に達成感と成功体験を与える」体育として近年まで小中学校で盛んに取り入れられていたのです。このような軍国教育まがいの精神論が、いまだに幻の重爆撃機「富嶽」の機影のように日本の上空を飛翔しているようです。与えられた課題の達成は、本物の金メダルではなくアルミ箔製のフェイクの銀メダル程度の価値で、人間ピラミッドのように危険で崩れやすい…それをアルミの安い輝きで表現しました。

決闘!硫黄島(近代五種麿参上)

2017年 木版画(パネル、和紙、油性インク) 121 x 183 cm

この作品の主人公、近代五種麿男爵はオリンピック競技の近代五種で競われる全ての種目(水泳、マラソン、フェンシング、射撃、乗馬) のモチーフを象った甲冑姿をしたヒーローです。そして、その甲冑の中に宿る精神は、金メダリスト西竹一男爵の霊魂です。彼は1932年ロサンゼルスオリンピックの馬術競技で金メダルを獲得する栄誉を受けたのち、1945年戦車連隊隊長として硫黄島で戦死しました。戦争の機械化(近代化)が、馬から戦車に移行し発展した歴史を象徴するかのような西竹一の魂が、現在も硫黄島で果たし合いの相手を待っている…そんなファンタジーを描いた作品です。


●作家略歴
【風間サチコ】

1972年東京都生まれ。「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作する。一つの画面に様々なモチーフが盛り込まれ構成された木版画は漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使するなど多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によってきわどいテーマを巧みに表現する。風間は作品のなかで、現代社会や歴史の直視しがたい現実が、時には滑稽でコミカルに見えてしまう場面を捉えようとしている。そこには作家自身が社会の当事者であるよりも、むしろ観察者でありたいという意識が反映されている。作品はフィクションの世界だが、制作に際しては古書研究をするなど独自のリサーチを徹底し、現実や歴史の黒い闇を彫りおこすことで、真実から嘘を抉り出し、嘘から真実を描き出す。2016年、日本文化藝術財団「第8回 創造する伝統賞」受賞。近年の主な展覧会に「光州ビエンナーレ The Eighth Climate (What does art do?)」(2016年)、「府中市美術館公開制作69 風間サチコ『たゆまぬぼくら』」(2016年)、「ヨコハマトリエンナーレ 2017 島と星座とガラパゴス」(2017年)など。


会期中の関連企画

●オープニングトーク
 出演 風間サチコ 聞き手:岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)
 4月28日(土)午後2時15分 参加自由(入館料別途)
 《ディスリンピック2680》をはじめ出品作について、制作者の風間サチコさんにお話を伺います。

●特別対談「過去、そして未来 ―幻の東京オリンピックをめぐって」
 出演 風間サチコ、安冨歩(東京大学東洋文化研究所教授)
 6月9日(土)午後2時15分 参加自由(入館料別途)
 『満洲 暴走―隠された構造』や『原発危機と「東大話法」』などの著書があり、「女性装の大学教授」としても知られる安冨歩さんをお招きし、オリンピックに象徴される「健全さ」がもたらす社会の生き難さについて、風間サチコさんとの対談を行います。



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