原爆の図丸木美術館 HOME
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原爆の図丸木美術館企画展

周在煥
Joo Jae Whan


孫壯燮
Son Jang Seob


閔晶基
Min Jung Ki


安星金
Ahn Sung Keum


崔秉洙
Choi Byung Soo


朴京勲
Park Kyong Hoon

クリム・コンジャン
(絵工場)
Kue Lim Kong Jang
司修
Tsukasa Osamu


上條陽子
Kamijo Yoko


出店久夫
Demise Hisao


田島和子
Tajima Kazuko


井口大介
Iguchi Daisuke


斎藤美奈子
Saito Minako







日本側作家選定
針生一郎

韓国側作家選定
安星金

コーディネーター
古川美佳

パフォーマー
大串孝二


2005年17日[土]―1028日[金]


オープニング・イベント
17日[土]
午後時〜



〈日韓五世代の対話〉展の日本作家
針生 一郎(原爆の図丸木美術館館長)

 この展覧会は、一昨年秋丸木美術館で個展をひらき、当美術館の重要性を再認識した韓国の美術家、安星金の提案と協力によって実現された。彼女が韓国側の出品作家を選定し、出品を依頼、作品集荷からそれらを航空便チッキとしてみずから来日し、飾りつけまで指導し手伝ってくれたことに深く感謝する。
 日本側作家は当美術館で当然とりあげられてよいのに、これまで縁がなかった人びとに重点をおいた(もっとも、田島和子、井口大介、上條陽子、出店久夫はこの展覧会の直前の〈今日の反戦展〉にも出品している)。
 司修は小説・評論、大江健三郎の著書などの装幀にもすぐれた社会批判的幻想画家。今回の出品作は最近出された『林京子全集』(日本図書センター刊)の表紙・カヴァー装幀のための原画八点で、林京子が小説、エッセイで扱い続ける原爆の傷(ケロイド)をモチーフとするから、丸木美術館での展示にふさわしいと作家は言う。
 上條陽子は人も知る安井賞受賞者だが、その後生活と直結した表現を求めるダダ的精神にめざめ、絵画形式を離れてインスタレーションに近づいた。何度かの西欧・中東旅行、とりわけパレスチナ滞在によって彼女のうちに何かがもうひとつはじけ、近年は頻繁にパレスチナに出かけて子供の美術教室で教えたり、彼らの作品を日本に運んで展示したりしている。最近パレスチナから帰ったばかりで、今パレスチナとのかかわりが彼女自身とその作品を大きく変えつつある。
 田島和子は、1997年から3年半、教育アドバイザーを務めた夫君とともに、3年半ほどパキスタンに滞在した。その間、現地の社会生活、風俗、伝統芸能などを観察し、パキスタンの美術家たちと交流し、ついにイスラマバードの国立美術館(やラホールのギャラリー)で彼女の個展を開催して好評を得たらしい。帰国数年になるが、彼女の作品はなおパキスタンの社会風物、それらと比較しての日本への省察を離れない。もともと描写力のある作家だが、外国滞在で大きく飛躍をとげたといえる。
 出店久夫は写真技師の経歴から身につけた写真技術を活用し、バルーン、環礁、動植物、人物、乗り物、海山の地形などの模型を転写して、左右対称のSF的世界をつくりあげる。技法的には同工異曲だから、そろそろゆきづまりかと思わせるが、細部のモチーフや全体の構成に工夫をこらして、けっして倦きさせず次々に新生面もきりひらく。表面に写真を転写したオブジェを、家具のように床におくのも、その一例だろう。今度の出品作は、6月に川崎IBM市民ギャラリーでひらかれた〈有象無象戯画〉と題する個展から選ばれる。
 斎藤美奈子の基本主題は一貫して人間だが、人間は誕生、青春、老化、死といった生物的時間と、自然・社会の環境、戦争、災害などの事件による歴史的時間の二つを負うている。そこで過去と現在、日本と外国、有名と無名の上述のような二つの時間の影をおびた人間の顔や住み家の写真を、歴史的トピックを象徴するオブジェとともに一見雑然と配置して、観客に記憶の再構成をうながすインスタレーションが、彼女の近作の基本戦略となる。彼女は2001年、オランダのクロラ・ミューラー美術館で開催された〈生きろ―to be alive〉というタイトルの日本美術新世代展にも選ばれ、この7月にもウィーンの〈カルティエル21〉で、〈意味の地図〉という題の日本女性作家二人展に参加したばかりだ。
 井口大介は多摩美術大を出たころから尖鋭な絵画表現及び絵画表現で注目されたが、その後数年ドイツに滞在した。作品のコンセプトについて厳密なドイツで、しかもより尖鋭な社会批判の方向をきりひらいたので、かなり評価を受けたと聞く。だが、帰国後の日本ではそういう傾向の美術が地をはらって消え失せたため、発表の機会も注目度も減っていることだろう。そういう困難のなかでも、ドイツでつかんだ思想を日本の現実にあてはめて具体化し、深化する井口の作品に共感するから、わたしは彼に出品を懇請して承諾を得たので、あらためて多くの人びとに注目を促したい。
 終りに一言すれば、この展覧会の日本側出品者に外国で活躍した作家が多いのは、日本美術家の行動半径の大きさを示すと同時に、現代日本の閉鎖的ナショナリズムのもとでは、中国や韓国の反日デモに象徴されるような外国の現実にふれなければ、自己批判と自己変革の展望すらもてなくなっていることの証拠でもあるだろう。■


〈日韓五世代の対話〉展の韓国作家
古川美佳(ふるかわみか/韓国美術・文化研究)
 日本が朝鮮を植民地化する先駆けとなった1905年の第2次日韓協約(乙巳勒約)から100年、1965年の日韓条約による国交正常化からは40年、さらに敗戦/解放60周年という今年は、両国においても節目の年といえよう。とはいえ最近の日韓関係は「韓流ブーム」とは裏腹に、過去の歴史に対する認識の違いが露呈し、悪化している観さえある。そうした中、「戦争への異議申し立て」を「美術」によって行うという共通認識のもとに対話を試みる本展示は、極めて意義深い。
 今回参加する韓国作家たちは、70〜80年代軍事独裁政権を打倒すべくわき起こった民主化運動に呼応して発生した「民衆美術」の作家たちである。民主化という目標がほぼ達成された後、却って内省と沈黙を余儀なくされた彼らは、だが今また、あくなき「戦争」という迷路から抜け出せない状況で、かつて民主化運動で蓄えた政治と美術の躍動的な関係を新たに蘇生させ、偏在する「現代の戦争」に芸術を通して向き合っている。
40年代生まれの周在煥は、例えばビンラディンとブッシュ大統領を対比させ、その欺瞞をユーモアたっぷりに表現するなど、諧謔的な美学により素材や技法にとらわれずに社会を風刺する。続く孫壯燮は、現実と非現実的な思考を交差させ歴史的な事件を表出し、民衆の生に根ざした朝鮮の自然を描く。閔晶基は「歴史の肖像」シリーズなど侵略や分断の辛苦をなめた民族の流浪を表す一方、風水地理的な観点から朝鮮半島の自然を描き、そこに生きる人々の歴史を埋め込める。そして50年代後半生まれの安星金は、朝鮮半島の南北分断に現代史の矛盾が集約される真相をえぐり出し、現在進行中の「戦争」を意表つくインスタレーションで顕在化させる。60年代生まれの崔秉洙は労働者から美術家になった、まさに民主化運動が生んだ「落とし子」である。デモや集会を鼓舞する強烈なメッセージのコルゲ・クリム(掛け絵)で知られ、イラク戦争開戦直前にはイラクを訪れ米国を批判するパフォーマンスを行い、常に運動と制作を同時進行させている。朴京勲は済州島で生まれ、長らくタブー視されてきた「済州島4・3事件」を力迫る木版画やデジタルプリントに刻み、虐殺の犠牲者の痛みを喚起させる。20〜30歳代という若い世代で構成されるグループ<クリム・コンジャン(絵工場)>は、99年「自主統一」のスローガンのもとに結成。労働者集会のための街頭壁画などを通じて、各種の社会運動と連携している。こうして各作家の世代の違いは微妙に異なる位相を示しながらも、切実な自身の生の一部として「戦争」を静かに形象化しているという点で、どれもが韓国の土壌が生んだ稀有な表現となりえている。■
 












司修
Tsukasa Osamu

『林京子全集』表紙原画

2005年

上條陽子
Kamijo Yoko

人間の尊厳とは
2005年

出店久夫
Demise Hisao

山水海岸図
My Landscape on the Beach
2005年

田島和子
Tajima Kazuko

63人の女性たち
63 Women
2000年


井口大介
Iguchi Daisuke

抵抗する子供たちの
    子供たちの子供たち
2005年

斎藤美奈子
Saito Minako


真昼の墓―ニッポン
The Grave at Midday - Nippon/Japan

(部分)
1995年





周在煥
Joo Jae Whan

文化爆撃
2004年

孫壯燮
Son Jang Seob

統一展望台
2005年

閔晶基
Min Jung Ki

歴史の肖像
1986年

安星金
Ahn Sung Keum

統一旗
2005年

崔秉洙
Choi Byung Soo

おまえの体は花となって
2003年

朴京勲
Park Kyong Hoon

断固たる現実 Made in U.S.A
2004年

クリム・コンジャン
(絵工場)
Kue Lim Kong Jang

勲章
2005年









大串孝二
Ogushi Koji
(9/17, Opening)