原爆の図 第1部 《幽霊》
それは幽霊の行列
一瞬にして着物は燃え落ち
手や顔や胸はふくれて、
紫色の水ぶくれはやがて破れて、
皮膚はぼろのようにたれさがった。
手をなかばあげてそれは幽霊の行列、
破れた皮を引きながら力つきて人々は倒れ、
重なりあってうめき、
死んでいったのでありました。
爆心地帯の地上の温度は六千度、
爆心近くの石段に人の影が焼きついています。
だが、その瞬間にその人のからだは、蒸発したのでしょうか。
飛んでしまったのでしょうか。
爆心近くのことを語り伝える人はだれもいないのです。
焼けて、こげただれた顔は見分けようもなく、
声もひどくしわがれました。
お互いに名乗りあっても信じることはできないのです。
赤ん坊がたった一人で
美しい膚のあどけない顔でねむっていました。
母の胸に守られて生き残ったのでしょうか。
せめてこの赤ん坊だけでも、
むっくり起きて生きていってほしいのです。
(原爆の図 第1部 《幽霊》 1950年 屏風四曲一双 縦1.8m×横7.2m)















