……5、2、3、っと……。これでよろしいのでしょうか?
うん、そうそう! それであとは決定ボタンを……
わあ! これで真宵さまといつでもお話できるのですね!
んじゃ試してみよっか。はみちゃん、かけてみて。
はい!(ピッ、ピッ――)
♪♪♪♪♪
(ピッ)はい、もしもし、真宵です!
もっ、もしもし、春美です!!
うん、聞こえるよ。成功だね!
(あんなに近くちゃ、肉声が聞こえるだけじゃないのかな……)
それにしても便利ですね、『けーたい』というのは。
春美ちゃんも新しく持つことになったんだ。あれ? でも倉院の里って、ケータイ通じないんじゃなかったっけ?
なに言ってんの! いくら倉院の里がイナカだからって、そこまでイナカじゃないよ!
でもぼくのケータイ通じなかったぞ。霧崎先生の事件のとき、ぼくとナツミさん、ケータイがつながらないからわざわざ屋敷の外に出て、公衆電話から通報したんだから。
そうだったの? けどあたしのケータイは通じるよ。でなきゃなるほどくんと最初に会った事件のとき、あたしとお姉ちゃんの会話がケータイに録音されるはずないじゃない。
あっ、そうか。そうだよなあ。
う〜〜ん…………。どういうことかな?
きっと真宵ちゃんとぼくのケータイは、契約会社が違うんだよ。ぼくの会社のケータイは電波が届かないけど、真宵ちゃんのとこのは届くってことじゃないかな。
なるほどねー。仙台で使ってたA社のケータイを東京に持ってっても使えたのに、東京で使ってたB社のケータイを仙台に持ってったら、仙台駅の真ん前から、仙台を脱出するまで電波が入らなかった実話みたいなもんだね。
わたくし、もうすこしこの『けーたい』を試してみますね。
あれ? 春美ちゃんどこ行くの?
ただ今のお話を聞いて不安になりましたので、外からこちらにかけてみることにします。
ここでかかるなら、ちょっと外に出たくらいじゃ変わらないと思うけど……。
行ってらっしゃーい。車に気をつけてね。
はい! 行ってきます!(タッタッタッ…………)
ところで真宵ちゃんのケータイもそろそろ古くなってきたんじゃないか? 2年前から新しくなってないみたいだけど。
うん。もうずっと変えてないよ。
そろそろ変えたら? 最近のケータイは新しい機能がいっぱいついてるし。
いいの。どうせあたし、電話するぐらいしか使えないし。それに……。
それに?
もうこれだけなんだ。お姉ちゃんの声が残ってるの。
(あっ…………)
お姉ちゃんがいつもそばにいてくれることは知ってるし、その気になれば手紙で話もできるから寂しくはないよ。でもやっぱり――
(そうか……。春美ちゃんや倉院の里の人に霊媒してもらっても、千尋さんの声までは出せないもんな)
♪♪♪♪♪
(ピッ)はい、もしもし真宵です。
『もしもし春美です。真宵さまですか?』
うん。はみちゃん、今どこ?
『今いつものラーメン屋さんの前です。聞こえますか?』
ラーメン屋さんの前? うん、ちゃんと聞こえるよ。
あ、真宵ちゃん。ちょっと春美ちゃんと代わってくれるかな。
……もしもし春美ちゃん? ちょっとそこで待っててくれないかな。ぼくがオゴるから、今日はそこで晩ごはんにしようか。今からぼくたちも行くよ。
えっ、ホント、なるほどくん!? やったー! みそラーメンだよみそラーメン!
はいはい、わかってるよ。
よおし、それじゃ善は急げ! さっそく行くよ!!