「「「あけましておめでとうございます」」」
 今年に入って初めて会った人間には、真っ先にそう挨拶する。
 そんな日本人の掟とも言うべき習慣を、そつなくこなすアイルランド人に内心感心しながら、俺は言葉と同時に頭を下げた。
 年始も三が日を過ぎた頃、バゼットが挨拶に来てくれた。向こうではクリスマスの方が盛況なはずだが、わざわざ日本の文化に合わせてくれたんだろうか。
 いつの間に正月を重視する日本の風習を学んだのかと聞くと、
「ええ、その……正直、士郎君からもらった年賀状がなければ気付かないままでした。
 クリスマスカードが届かなかったのに年賀状が届いたと驚いていたら、ランサーが教えてくれたのです」
「そうか、納得。アンタが日本の正月にそれほど詳しいとも思えないもんな」
 それにつけても驚嘆すべきは、同じくアイルランド人、しかも古代の英雄でありながら日本事情に詳しいランサーか。さすが全身サバイバー。
 バゼットは一部の隙なく着こなしたスーツで、ビシッとおじぎをしてくる。
「昨年は本当にお世話になりました。また本年もよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いいたします」
 セイバーもしっかりと綺麗におじぎをした。
 特に気のきいているわけではない、当たり前な新年の挨拶。だが本人の心根だろう、セイバーがやるとそんなありふれた挨拶が驚くほど気高い、凛としたものになる。
 ―――本当に、セイバーは綺麗だ。それは外見だけの話じゃない。常に高潔な精神が全身からにじみ出ているのを確かに感じる。
 そんな彼女に見惚れていると。
「そうですね。今年こそ、貴女と一戦交えてみたいものだ、セイバー」
 …………ん?
「ええ、私もです。シロウの護衛役をしたいと言うのなら、まず私に勝ってからにすべきですから」
 …………あれ???
「ほう。では貴女に勝てば、合格というわけですか?」
「もちろん。私も大河からシロウの護衛として認めてもらう時、同じ条件を出されました。
 私より強い護衛でなくては意味がない。最も、ブリテンの大地を背負う身として、負けるつもりはありませんが」
「それは楽しみです。士郎君の護衛役はさておき、キング・アーサーと手合わせをするなどこれ以上の栄誉はない。現代まで磨き上げられた格闘術を存分にご披露いたしましょう」
 ふふふふふふふふふふふふふふふ。
 背筋をピシッと正したまま、二人は油断なく睨み合う。
「待った! 新年早々玄関先で火花飛ばさない!」
 慌てて間に割って入る。
 ……はあ。この調子じゃ、家の中に入った時が思いやられるなあ……。



 せっかく来たのだからとバゼットには家に上がってもらった。すると。
「あら、ごきげんようバゼット。こんなところで顔を合わせるとは珍しいですね」
「カレン……!」
 居間で正座している銀髪シスターの姿を見たとたん、バゼットの全身の毛が逆立った。
 なんの因果か、バゼットが来るわずか10分前。
 教会のシスターも、お供を連れて新年の挨拶にやってきていたのだ。
「貴女も来ていたのですか…………」
「ええ。やはり昨年お世話になったところに挨拶をし、今年も世話をかける断りを入れておく。当然の行為でしょう」
 苦み走るバゼットと、飄々とした顔のカレン。
 カレンの場合は本当に、今年も世話になる――と書いて遊ばせてもらうと読む――つもりでいるから、新年の挨拶も念の入ったものになる。それも極めてありがたくないカタチで。
 嫌そうな顔を隠そうともしないバゼットに、今度は台所から声がかかった。
「よお、バゼット。奇遇だな」
「ラ、ランサー!?」
 現れたのは勝手にうちの冷蔵庫を漁っていたランサー。
 今度は面白いくらい慌てだす。おお、顔が赤い。純情だなあ、ランサーとは何度か街で会ってるはずなのに、不意打ちで会うのは弱いらしい。
「あ、あ、貴方まで何故…………」
「しょーがないだろ。そこのシスターに無理やりお供をおおせつかったんだよ」
「やはりタダ飯食らいなのですから、番犬にぐらいはなってもらいませんと」
 表情を変えず言って、カレンはお茶をひとすすり。その態度がバゼットの癇に障ったらしい。
「カレン! 何度も言いますが、貴女はランサーのマスターではありません! ランサーを所有物扱いするのはやめなさい!!」
「まだそんなことを言っているのバゼット。私との取引に応じない貴女が悪いのでしょう」
「いいえ。元々両方とも私のものだ。それは取引になっていません。私は自分の物を取っていった詐欺師に、元の持ち主に返せと言っているだけです」
「そんなに言うのならば、ここはひとつランサーをかけて勝負でもしてみます?」
「面白い。受けて立ちましょう」
 あああああ。なんかトンでもないことがあっという間に決まってしまった。
 せめて外でやってくれないかなあ、と蚊帳の外を決め込んでいると。
「士郎君」
「衛宮士郎」
 二人の瞳がぐるりとこちらを向く。
「「なにか良い勝負方法はありますか?」」
 …………なんで俺を巻き込むんだよ、二人して。





「これがこの国の正月文化ですか。このようなカードは初めて見ました」
「まあアンタもたまには遊びを覚えるといい。まだガチガチしてる肩がもっと力抜けるぜ、マスター」
「彼女は今は貴方のマスターではないのよランサー。まったく、主人の顔も覚えられないとは、どうしようもない駄犬ね」
 どうしてこうなってるんだろう。いや、この家でカレンとバゼットが顔を合わせた時点で、すでに決定していた事だったのか。
 良い勝負方法を、と二人に言われたって、俺には公平かつ正確な勝負方法など思いつきもしない。唯一希望をあげるとすれば、平和的にというただ一点。
 そんなわけで土蔵から目についた遊具を持ってきてみた。おそらく見るのも初めてなのだろう、渦中の三人は新しいオモチャを見るように興味を示している。いやまあ、実際にオモチャなんだけど。
 そして同じく、さっきまで我関せずでのんびりしてた外野が、初めて見る遊具に対し質問を投げてきた。
「シロウ、これカルタって言うのよね? キリツグから聞いたことあるわ」
「へえ、よく知ってるなイリヤ」
「えへへ。でも遊び方は知らないわ」
「まず絵札をバラまいて、一人が字札を読み上げるんだ。んで、他のみんながそれに対応した絵札を取る。多く札を取った方が勝ちっていう単純なゲームだな」
「ほほう。つまり略奪戦ということですね」
 うむ、と大きく頷くセイバー。……頼むから、そんな物騒な単語を使わないでほしい。ただのカルタなんだから。
「ねえねえシロウ、わたしもやってみたい! いいでしょ?」
「シロウ、私も是非。ここでバゼットとの前哨戦をつけておきたいのです」
「え、イリヤとセイバーが!?」
 …………不安だ。正直バゼットとカレンだけでも不安だというのに。しかも今の説明を聞いて、ランサーまで腕まくりしてやる気マンマンになっている。
 このメンツで、静かに終わるわけはない。これは直感なんかじゃなく、れっきとした確信だ。
 しかし。
「………………………………。できるかぎり、穏便に、な」
 バゼットたちが良くてセイバーとイリヤがダメ、という理由がない。どうしてダメなのかと問われ、まさか家が壊れそうだからとは言えまい。
 こうなれば、もう少し冷静で抑止力になりそうな人々の力を期待するしかない、と視線を巡らせてみれば。
「……じゃ、わたしたちは部屋へ引き上げるから」
「そうですね。姉さんの部屋でお茶会でもしましょうか」
「一足早い小正月というわけですね。せっかくだからのんびりさせていただきましょう」
 俺の視線の意味をきっと理解していながら、さっさと見捨てた遠坂と桜とライダーが、無情にも居間を去ってゆく。
 ちなみに小正月とは女正月とも呼ばれ、年末は大掃除やおせちの準備、年始は来客をもてなす対応と結局休みのない一家の主婦が、ゆっくり休むための行事である。一般的には1月15日がそれに当たる日だ。
 ……とはいえこの家の場合、それで休むのは俺と桜という気もするのだが。どうやら男で一家の主夫をやっている俺には休みなどないらしい。
 それはともかく。
「結局、俺がなんとかするしかないのか…………」
 大きな大きなためいき。これからカルタ取りをする面々は不思議そうな顔で俺の憂鬱を見ている。どうやらなぜ俺がこんな顔をしているかわからないようだ。
 ……ああ、いや、カレンだけは別か。これからの事態を的確に予想し、かつ、俺の葛藤を楽しんでいる顔だ、あれは。
 できるだけ被害が小さくなるようひたすら祈りながら絵札を広げ、皆の準備が出来たのを見計らって最初の札を読み上げる。
「『犬も歩けば棒に当たる』」
 一斉にみんなの視線が下を向いた。みんな思い思いの場所を探してきょろきょろしてるのを一歩引いて見るのは、これでなかなか面白い。
 と、ランサーが自分とカレンの間に目的の札を見つけた。
「お、もーらい…………」

「――――――『私に触れぬノリ・メ・タンゲレ』――――――」

 しゅるるるるっっ!!

「もがごもっっ!?」
 とたん、真っ赤な布がどこからともなく出現し、ランサーの体をミノムシみたいに拘束した。
 カレンはその間に、悠々と札を取る。
「ふむ、こんなものですか」
「ちょっと待てええぇぇぇ!」
 ランサーがなんとかマグダラの聖骸布の拘束から口元だけを出し、カレンに怒鳴りつけた。無理もない、いきなりこんな攻撃を受ければ誰だって文句のひとつも言いたくなるだろう。
 だがカレンは涼しい顔で、クイッと聖骸布の端を引っ張る。拘束されたランサーの体はそのまま畳に倒れ込んだ。
 そんな彼を冷徹に見下ろし、
「あら。か弱い女性にハンデのひとつもつけられないというの? クーフーリンの英雄譚では女性に甘いということだったけど、私は女性ではないということですか」
 ……それ以前の問題だと思うんだが。
 クランの猛犬の睨みをそよ風のごとく受け流し、カレンは取った札をさっさと自分のものとして抱え込んでしまった。そんな彼女に、ランサーの反対側から怒声が飛ぶ。
「カレン! 貴女はまたランサーをそんなふうに……!」
「あらバゼット。自分のサーヴァントをどう使おうと、それはマスターの勝手ではなくて?」
「彼は貴女のサーヴァントではありません! だからいい加減私に返せと……!
 そもそも自分のサーヴァントであろうとも、そんな風に英雄を扱っていいはずがない!」
「自分のサーヴァントを左腕にしてしまった人には言われたくないわ」
 喧々囂々、侃々諤々。この二人は何かきっかけがあるたびに、こんな水掛け論を繰り返している。
 言峰綺礼のサーヴァント、ランサーことクーフーリンは、元々バゼットのサーヴァントだった。それが聖杯戦争が本格的に始まる前、言峰に騙し討ちされて令呪ごと奪われたのだ。
 今ではマスターの言峰の他に、カレンまでもがマスター権を主張するようになってきた。令呪はなくとも、彼女にとってランサーとギルガメッシュは教会の所有物、という扱いらしい。
 その一方でランサーを返せと主張し続けるバゼット。しかし言峰にはどうも強く出られない理由があるらしく、もっぱらカレンの方に噛みついている。カレンはマスターじゃない、と主張するわりには、カレンの方に文句をつけるあたり矛盾してるんだけど、本人はまだ気付いていないようだ。
 一方教会側は、言峰はあまりランサーに執着してるようには見受けられないのだが、カレンがランサーを手放そうとしない。正確にはランサーを手放したくないというより、バゼットに対する交渉の材料にしているフシがある。そうまでしてカレンが欲しがり、またバゼットがそれを手放さずランサーをも取り戻そうとしてるものが何なのか、俺はよく知らないが。
「……相変わらずの関係ですね、あの二人は」
「年が明けても変わらないよな」
 隣のセイバーのつぶやきに頷きを返す。うちの英雄さんはわりとのびのびと過ごしてもらってるが、たしかにサーヴァント達の中には不遇の扱いを受けてるやつも多い。その筆頭がランサーで、次点はおそらく遠坂邸の執事サーヴァントだろう。もっとも以前、桜とライダーが遠坂邸に行った時に見た様子では、ずいぶん楽しそうに家事をやっていたという話だが。
 ……おかしいな、なんだかひどく既視感が。
 それはともかく二人とも。
「そろそろランサーをほどいてやった方がいいんじゃないか?」
 ほら、ランサーのやつあんまり強く締められすぎて鬱血してるし。
「ああっ、ランサー!?」
 ランサーの顔色に気付いて、慌ててバゼットが聖骸布を剥ぎ取ろうとするが、彼女が手をかける前にカレンが聖骸布を自分の手元に戻した。
 ……こちらはまったく驚いた様子のなかったあたり、おそらくランサーの状態を知っていて放置していたのだろう。恐ろしい。
 自分が助ける前にランサーが解放されたという事実が、それはそれで気に食わないのだろう。バゼットはますます目つきを鋭くしてカレンを睨みつける。
「そうですか。たとえ遊戯であっても油断はできない。魔術師同士の争いに魔術を持ち込むのは、呼吸をするのと同じくらい自然なもの。そう言いたいのですね、カレン」
「さあ? 私は魔術師ではなく修道女ですから」
「わかりました。貴女がそのつもりなら――! 士郎君、次を読んでください!」
「……とりあえずその認識は間違いだって事だけは言っておくぞ」
 ああしかし、すっかり頭に血の上ってしまったバゼットが聞いているかどうか。
 胃が痛くなる思いのまま、次の札を読む。
「『論より証拠』」
「む、これですね」
 セイバーがすぐ近くの札に手を伸ばした。その時。
「”後より出でて先に断つものアンサラー”――――!」
 迸る青い光。それは過たずセイバーの手の先の札を撃ち貫く!
 バシュウゥゥゥ!
「な――――――!」
 絶句するセイバー。
 フラガラックは煙をあげながら、プスプスと音をたてている。さっきのカレンのは単なる拘束だけど、フラガラックは立派な武器だ。
 それを臆面もなく放っておきながら、バゼットはそれが当然のような顔をして、
「その札は私のものです」
 言い放った。
 ――――カチリ。
 実際の音ではない、けれど決して聞こえてはいけなかった、破壊兵器のスイッチが入る音が確かにしたのを俺は聞いた。
「ふ、ふ、ふふふふふ。そうですか。魔術師メイガス、それは私への宣戦布告ということですね」
 うわあセイバーにまで飛び火したーーー!!
 かつてブリテンの王として無敗を誇ったセイバー。挑まれた戦は決して退かず、かつその全てに勝利してきた彼女。
 それはつまり、戦う事を決意したセイバーを止めるのは容易ではないということ。
 あああ、どんどん状況が悪くなる。
「へっ、面白そうじゃねえか。久々に熱く楽しめそうだぜ」
「うん、たまには本気を出すのもいいわよね」
 そして聞こえる、ドン底の俺をさらに奈落の底へつき落とす、他2名の声。
 …………そうだった。こいつらも血の気の多い人種だったんだ…………。



刺し穿つゲイ――――死棘の槍ボルク!」
 ズバシッッッ!!
「やっちゃえ! バーサーカー!」
「■■■■■■■■■■■■―――――!!!!!」
 ドオオォォォォン!!
「はあああぁぁぁぁぁ!!!」
 ビュロロロロオオォォオロォォッッ!!
「ええい、やめやめやめーーーーー!!!!」
 セイバーの風王結界インビジブル・エアが出たところで、さすがに家主ストップ。
「お前ら!! うちを壊すつもりか!?」
「な、シロウ! それは言いがかりです、私は勝利のために―――!」
「勝利の前に家が敗北するわ! ちゃんと現実を見ろ!!」
 我ながらここまでヒステリックに叫ぶのは珍しいが、そうせずにはいられないのが現状であった。
 滅多になく怒鳴り散らす俺を見て逆に冷静になったのか、セイバーはじめカルタとりの面々が居間を見渡す。そして。
「あ………………」
 そこで初めて、居間の惨状に気付いたようだ。
 うちはただの日本家屋。切嗣おやじが多少の結界を張ってはいるが、それも侵入者の悪意に反応して警告音を出す程度。他はまったく普通の、一般人用の日本家屋なのだ。
 そんな中で魔術師やサーヴァント達が遠慮せず暴れれば、どうなるかは推して知るべし。
 障子は吹き飛び、ガラスはあちこちひび割れ、畳には焦げ跡がついている。小さな置物はほとんどが床に散乱していた。
 そして主役たるカルタたちも、すでに参加者たちの目に入ってなかったらしい。無事な札は半分ほど。逆に言えばもう半分は、もはや使い物にならないという事だ。
「まったく…………」
 それしか言葉が出てこない。呆れて物も言えない、とはこのことだ。
「ううっ………………」
 俺の呟きを聞いたセイバーが隣でうなだれている。ちょっと可哀想な気もするけど今回ばかりはそう簡単に許してやるわけにもいかない。迷惑をかけたことがわかっているのか、バゼットとイリヤもしおらしくなっている。
 露骨に目を逸らしているランサーと、私悪くないですといった態度を崩さないカレンこそ反省して欲しい気もするけどな。
「カルタ大会は中止。このカルタじゃもう遊べない。みんないいな?」
「し、しかし士郎君……」
「なんだろうかバゼット」
 少しこめかみに力をこめて、笑顔を作ってみる。バゼットの顔がひき、と引きつった。
「あ、その……まだ残っているカードを使えば、勝負は、きっと…………」
「なるほど。そしてもう一度、このカオスを再現したいと。そう言うんだな? バゼットは」
「……………………申し訳ありませんでした」
 大人しく引き下がってくれた。うん、素直なのは良い事だ。
 ためいきをつきつつ、バゼットのフラガラックで焼け焦げた札や、ランサーのゲイボルクで穴の開いた札、バーサーカーの怪力で折れた札などを集めてゆく。セイバーの風王結界で部屋のどこかになくなってしまった札は、そのうち掃除で出てきたら捨てればいいだろう。
 ―――まあでも、カルタがなくなった以上、この上さらに争いは起きようがない。せっかくの年始なんだから、あとは平和にいきたいもんである。
 そう願って、ためいきではない息を吐―――
「やっほー! 士郎いるー!?」
 けなかった。
 玄関先で大声をあげ、そのままズカズカと上がりこんでくる遠慮のなさを持つのはまさしく一人だけ。
「藤ねえ。どうしたんだ、まだ夕飯には早いぞ」
「違うもん。夕飯も食べに来たけど、その前にこれで遊ぼうと思って」
 そう言って、藤ねえはスカートのポケットから、ナニカ、を取り出す。
 ――――それは、何枚ものカード。
 手のひらに乗るほどの大きさのカードは。
 描かれた色とりどりの植物、そして動物や短冊。
 アア――――――――

「えへへ、花札持ってきちゃった。お正月だし、わたしが教えてあげるからこれやろうよ、ね?」

 ――――――――ナンテ、無情。
「ほう、花札とは何ですか?」
「聞いたことがあります。確か西洋のトランプのようなカードゲームとか」
「わーい、なんか知らないけど、それなら絶対負けない気がするわ!」
 わらわらと現れ、興味を示すセイバー、バゼット、イリヤ。
 その後ろでカレンがアクマの囁きを漏らした。
「それならば、マスターとサーヴァントでチームを作って戦ってみたらどうかしら? それならば良い戦いになる気がするの。なぜか知らないけど」
「なるほど。今度は場所を移し、遠慮なく宝具合戦を繰り広げられるというわけですね。なぜか知りませんが」
「ええバゼット。今度こそ貴女に、魂の性別を見る聖骸布の威力を思う存分教えてあげられると思うわ。なぜか知らないけど」
「愉しみにしています。リング上でなら殺人は合法ですから」
 ふっふっふっふっふ、と不気味な含み笑いをするカレンとバゼット。
 俺の隣では、セイバーが気合を入れすぎて武装していた。
 …………いいよ、もう、どうにでもしてくれ…………






 お題その46、「年始後初顔合わせ」。……うあ、ラブがねえ。まあほら、セイバーも人間として、士郎とだけ付き合ってるってのはダメだと思うし(苦しい言い訳)つかセイバー主体ですら……
 うちでは初登場バゼットさん。彼女はむしろ生真面目すぎて暴走、というキャラが面白い。って、これセイバーと似た立ち位置だなあ。もちろんあたふたするダメットお姉さんも大好きです(笑)いやジブンより年下ですがお姉さん。
 うちは言峰もカレンもいるので、ランサーとギルの所有権を一応明確にしておかねばならぬのでした。そんなわけで強引に作ってみましたです。いやあの公園でのたむろ具合とか花札パッチとかを見るに、令呪とか関係なく二人ともカレンは苦手そう。
 ホントはあの、型月HP(同人の方)2003年年賀絵の晴れ着を着せてあげたかったんですけど。御大絵の中でおそらく唯一、セイバーが青ではないリボンをしてるヤツ。でもそれじゃカルタ取りができないので断念。それだけが唯一の心残り。機会があればぜひ来年ッッ……!!




戻る