風のように < L. C. Yan に捧ぐ >   

時々私は道の途中で,私の目の前を自転車に乗って
走り過ぎて行く少女に出会うことがあります.

ショートパンツを履き,ノースリーブで,
高々と太腿を上げ,軽やかにペダルを踏みながら,
彼女は,風のように通り過ぎます.
そして,その一秒後には,
聴き取れないほどにかすかな音を残して
彼女の未来の方角に消えて行きます.

そんなことがあると何時も私は,
その自転車の後を付けてみたい気持ちになります.
けれど,私は自分の自転車を止めて,無言で彼女を見送ります.
彼女のスピードは既に私のものではありません.
私は,「時がこのように過ぎて行った」ことを確認します.

あなたは,自転車で私の前を走り過ぎて行った,その少女です.
前方をまっすぐ見詰め,髪を風になびかせて,
道端に立っている者を振り返ることもなく,
こんがりと焼けた手はハンドルをきつく握り締め,
てのひらにはあなたの聖なる汗をにじませて.

あなたは,私の目の前に時折現れた,その少女です.
ほんの一瞬だけ,そして次の瞬間には消えてしまった...
私は何度かあなたに出会っています.
しかし,ついにあなたを掴まえることはできませんでした.

あなたは,未来に属しています.

M.N. 99/9/15

英語版ローマ字版