読みました

あなたのグリーティングカードを読みました.
ありがとう.この日を決して忘れません.

封筒をピッチリと包んでいる透明なシートを剥がしました.
どんな風にですか?多分,できる限り丁寧に.

匂いがします.あなたの匂いです.
私はこの匂いを判別できませんでした.
あなたはなんというお香を使われているのでしょう?

とても懐かしい香りです.あなたはとても甘い匂いがします.
可愛い人!私はあなたを「私の恋人」と呼びます.
どうか,それを認めてください.
あなたと暮らすことができたら,と切に思います.
たとえそれがたった1日だけのことであったとしても,
(ないし一夜限りであっても)

私には,あなたが唇を置かれたところがわかります.
紙に残るあなたの温かくまた冷たい指先を感じています.
以前,あなたがなぜ私にあなたのアドレスを教えて
下さらなかったのかがわかります.
質料はあなたを直接に運んできます.

鋏で封筒を開きました.金箔を押した文字の下に,
あなたの「あいさつ」が私の言語で書かれています.
可愛らしいかな文字が,何時ものあなたのように
笑っています.

あなたがいます.あなたがご自分の手で記された署名です.
あなたは今度は少しお澄まししているように見えます.
あなたのペン先が刻んだ溝には,少し前かがみになって
サインしているあなたの映像が記録されています.

赤は,あなた方中国人の好みの色ですね.
私たちはその色の中に沈み込んで行きます.それは,
3つ折の衝立で仕切られた恋人たちの小部屋です.

どうしたら私は,この香りが揮発してゆくのを
止めることができるでしょう?
どうしたら私は,この匂いを覚え込むことができるでしょう?
この香りがあとかたも無く消えてしまった後で,私は
この匂いを思い起こすことができるでしょうか?

封筒を包んでいた透明なシートにあなたの手紙を戻しました.
何故ですか?できれば,この香りを永遠に保存するために.

M.N. 7/1/2000

英語版, ローマ字版